『野性の呼び声』ジャック・ロンドン/深町眞理子訳(光文社古典新訳文庫)★★★★★

 『The Call of the Wild』Jack London,1903年

動物ものとか子供ものとか難病ものとか、取りあえず作品中にそういう要素をぶっこんでおけば的な作品が多いジャンルなので、あんまり期待してなかったんだけど、かなり面白い。

 男《おっとこ》くさい犬ハードボイルドである。通俗的な意味でも文体上の意味でも。

 文字どおり無言を通し、人生を学び、生きるために戦い、友情をはぐくみ、やがて野性に目覚めて……というマッチョな要素たっぷり。それでも安っぽくもナルシスティックにもならないのは、過度な擬人化を抑えた客観的な文章と、「犬=獣」という読み手の感性に負うものでしょう。そういう意味では上手い設定。ハードボイルドが苦手な人にこそ読んでほしい。

 ゴールドラッシュに沸くカナダ・アラスカ国境地帯。ここでは犬橇が開拓者の唯一の通信手段だった。大型犬バックは、数奇な運命のもと、この地で橇犬となる。大雪原を駆け抜け、力が支配する世界で闘い、生きのびていくうちに、やがてその血に眠っていたものが目覚めはじめるのだった。(裏表紙あらすじより)
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