『ミステリマガジン』2008年10月号No.632【イアン・フレミング生誕100周年】★★★☆☆

 イアン・フレミングというか、スパイ映画特集ですね。007及び、『それ行けスマート』の映画化『ゲットスマート』特集。

「007号ニューヨークを行く」イアン・フレミング/小林浩子訳(007 in New York,Ian Fleming,1963)★★★☆☆
 ――ボンドが胸中にしたためる任務の合間の憩いのひととき。(ページ袖あらすじより)

 イギリス人ジェームズ・ボンドアメリカン・ショック。な話。
 

イアン・フレミング年表」、「特集ガイド」「『007/慰めの報酬』ガイド」編集部、「ジェイムズ・ボンド文献の遍歴」直井明

「すいません、チーフ(前篇)」ウィリアム・ジョンストン/富永和子訳(Sorry Chief,William Johnston,)★★★★☆
 ――今回の任務は、人間を透明にすることのできる調合液を開発したX博士が、薬液と製法を犯罪組織ケイオスに売り渡すのを阻止せよというもの。科学者の団体が乗る客船に同乗し、団体に紛れ込んだX博士を見つけ出さねばならないが、ここでとんでもないどたばたが展開されるので乞ご期待。(解説あらすじより)

 『それ行けスマート』の姉妹篇、とのこと。お約束なギャグがテンポよく炸裂する、切れ味鋭いすっとこどっこいなコメディである。特殊装備車のボタンを誤って押してしまったのに、銃撃されても知らん顔して走るトラックとか、脱出装置でパラシュート落下してきた座席を火星人の襲来だと思い込む通行人とか、主役がボケると周りもしっかりボケてくれるあ・うんの呼吸がすばらしい。
 

「なかった戦争」エドワード・D・ホック/木村二郎(The War That Never Was,Edward D. Hoch,1999)★★★☆☆
 ――パブで男が元スパイに語った「なかった戦争」とは?(袖あらすじより)

 シリアス・タッチで書かれても「ふうん」というような話だけど、「なかった戦争」の謎は魅力的な作品。
 

「僕のスパイ小説受容史」松坂健、「東? 西? 方位磁石の話でもしているのかね、ボンドくん」古山裕樹、「『震えるスパイ』の読みどころ」菊池よしみ
 

「特別対談(前篇) そこにあったアメリカ」小鷹信光×片岡義男
 なんか完全にお二人の個人史の話です。まあ面白いからいいんですが。
 

「迷宮解体新書10 片理誠」村上貴史

「私の本棚10 仁賀克雄」
 

「僕は長い昼と長い夜を過ごす」小路幸也
 ――50時間起きて20時間眠る生活を送る青年の怪しいバイト。(袖あらすじより)

 文体が受けつけなかった。
 

「新・ペイパーバックの旅 第31回=pbはペイパーバックの代名詞」小鷹信光
 

「書評など」
◆今回は舞城王太郎ディスコ探偵水曜日に尽きるでしょうかね。ひさびさにめちゃくちゃ度が高そう。

◆映画からはわが教え子、ヒトラーヒトラーの演説指導に当たったのはユダヤ人俳優だった――という設定の「狂騒的なコメディー」だそうだ。

◆DVD『DON ドン―過去を消された男―』は、組織の幹部になりすまし潜入捜査中に逮捕されてしまったが、事情を知る上司たちは既に死亡しており……というあらすじだけ見ればまともなサスペンスっぽいのだが、「インド映画だからもちろん歌と踊りは欠かせない」のだそうだ。
 

「独楽日記 第10回 水納鳥のマーラー佐藤亜紀

「誰が少年探偵団を殺そうと。」02 千野帽子「ミステリをミステリと知って読むのは最大のネタバレである。」
 井伊直行『さして重要でない一日』。あらすじ紹介だけで終わってしまったような印象だったので、先月号を読み返してみると、「謎だけ思わせぶりに提示しておいて、探索するけれど解決がない(〈カフカ以後〉な感じの)小説とか、伏線がなくてサプライズだけがある純文学とか、極端なばあいにはそのサプライズがけっこうバレバレな物件とか、そういうものに対する愛おしさによって、この連載はつき動かされるはずである」とあった。
 

「お茶の間TV劇場」02 千葉豹一郎「サンセット77」
 

「プロメテウス・チェックメイト(前篇)」福田和代
 ――テロリストに連れ去られたシャオトンを助け出す秘策とは?

 前篇。なのだが、果たして後篇が次号に掲載されるのか、今まで通りのペースなのかがわからないので、読むのは保留。後篇が出てからまとめて読む。
 

「夜の放浪者たち 第46回=木々高太郎「完全不在証明」後篇)」野崎六助

「藤村巴里日記 第18回」池井戸潤

「夢幻紳士 回帰篇(第二話 首屋敷)」高橋葉介
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 『ミステリマガジン』2008年10月号
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