『ミステリマガジン』2014年12月号No.706【作家特集エドワード・ゴーリー/小特集 アガサ・クリスティー賞】

作家特集エドワード・ゴーリー

「黒い人形」エドワード・ゴーリー柴田元幸
 シナリオ。

ゴーリーとミステリ」濱中利信

「死の吸取紙」エドワード・ゴーリー/濱中利信訳
 絵本。

「『ゴーリー的』な世界」五代ゆう

「不穏な魂――ゴーリー」ひらいたかこ

「探偵のいない国」芦辺拓
 

「「007」と「猿の惑星」とゴーリーを結ぶもの」小山正
 ゴーリーは小説や絵本だけでなく、他人の作品の挿絵も描いている。パロディを駆使した核諷刺SF詩集『Quake, Quake, Quake』の作者ポール・デーンというのが実は――という話なのですが、話はそれに留まらず、まさしく核を描いたデーン脚本の『続・猿の惑星』には前記『Quake…』のゴーリーの挿絵を髣髴とさせるシーンもあるのだとか。
 

「ちょっとエッチなゴーリーの珍しい本」山崎まどか

エドワード・ゴーリー・ハウスのこと」田中優子(編集者)
 

小特集 アガサ・クリスティー

「しだれ桜恋心中四方山話」松浦千恵美

「『しだれ桜恋心中』レビュー」吉田伸子

「中里友香の作品世界に浸る」鴻巣友季子

「青い春と今は亡きサロメ」森晶麿

「切断された手首の問題」三沢陽一 ★★☆☆☆
 ――母校のT北大学の空き部室を、ホテル代わりに使おうとしたわたしは、聖書研究会の部室で、手首を切断された死体に出くわした。死因は自然死らしいが、死後に手首を切断して持ち去ったのは、鍵を持っている部員である可能性が高い……。

 発見者や探偵によるこういった非常識行動や超絶理論は、もっと探偵小説探偵小説した舞台でやってくれないと、そらぞらしいだけでした。もっとも、短篇「アガサ・クリスティー賞殺人事件」の続編らしいので、そっちを既読であればまた違った印象を持つのかもしれません。

 これでアガサ・クリスティー賞受賞作家の短篇は第一回から第三回の受賞者まで読んだことになります。第一回が雰囲気キャラクター小説(はずれ)、第二回が耽美幻想小説(まあ当たり)、第三回が上滑り本格(はずれ)、第四回もあらすじで「……」という感じで、打率低いです。
 

「77の翻訳手習い〜小鷹信光と探る、翻訳ミステリについて〜」片岡義男×小鷹信光×川崎大助

「『黒い瞳のブロンド』合評会」小鷹信光×池上冬樹×編集部
 フィリップ・マーロウもの新作(公式続編)『黒い瞳のブロンド』。買う気はなかったけれど、こういう座談会や合評会でわいわいしてるのを読むと、やっぱり読みたくなります。チャンドラーの文章の難しさや、ベンジャミン・ブラックの譬喩やレトリックについて話されていて、「そいつが、私がどこへ行きたいか、なにができるかを教えてくれた」というのが「go to hell」「fuck yourself」の意味なんだとか(ナルホド)。こんなの日本語で読んでもわからないですよね(^^; 刊行書ではどう処理されているのか楽しみです。そして訳者の小鷹氏、今回は敢えて村上春樹チャンドラー風に訳したのだとか。「海外の作家は、ハードボイルドの探偵に、生き方を求めていないんだなということが、よくわかりますね」という池上氏の発言もあり(日本では求めてるのかよ!)、「ハードボイルドだど」が嫌いなわたしとしては、俄然興味が湧きました。
 

「書評など」
「うねり、のたうつ大蛇のようなツイスト」と評されたピエール・ルメートル『その女アレックス』が面白そうです。著者名が一発変換できたので、おや?と思って確認してみたら、去年の12月号でオットー・ペンズラーが紹介しているのを読んで面白そうだと感じていたのをすっかり忘れていました。『さよなら、ブラックハウス』ピーター・メイは、「出版拒否から一転、刊行後大ブレイク」という惹句が気になっていたのですが、「ミステリ的な構成は多少甘い」「失われた青春の残像の瑞々しさ」というのがちょっと不安要素。青春といってもいろいろあるからなあ。『ハローサマー、グッドバイ』みたいのじゃなく、『フリント船長がまだいい人だったころ』みたいのだったらいいな。

『両シチリア連隊』の著者アレクサンダー・レルネット=ホレーニアは、レオ・ペルッツの弟子だか何だかなのだそうで、個人的にはそれだけで買いです。

片岡義男×鴻巣友季子『翻訳問答』は、『黒い瞳のブロンド』の座談会でも触れられています。面白そうな本です。

『いなくなれ、群青』河野裕は、『サグダラリセット』の著者による新作。新潮文庫nexは「ライトノベルレーベルではない」だそうですが、なるほど実物を見てみれば、背表紙のデザインがださくてスピンがなくて表紙がイラストであること意外はふつーの新潮文庫で、笑えますぜ。

「ミステリ・ヴォイスUK(84)スコットランド・イン・ハロゲート」松下祥子

 


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