『S-Fマガジン』2008年10月号No.630【《新しい太陽の書》読本】★★★★☆

 数ページ読んで挫折したんだよなあ。ヒロイック・ファンタジーぽくて。若島氏のコラムに従って、ナボコフだと思って読めばいいのかもしらん。

「地図」ジーン・ウルフ柳下毅一郎(The Map,Gene Wolfe,1984)★★★★☆
 ――船の船長をしているイータは、ある男からギョルを南へ下る旅の案内を依頼されるが……(袖あらすじより)

 外伝。与太話っぽい冒頭の船長に関する挿話が、旅人の身の上にもスライドしてゆく後半がスリリング。
 

「葉と花の帝国」ジーン・ウルフ宮脇孝雄訳/加藤龍男イラスト(Empires of Foliage and Flower,Gene Wolfe,1987)★★★★☆
 ――緑の国と黄色の国は、いつ果てるとも知れない戦争を続けていた――〈茶色の本〉に収められた物語。(袖あらすじより)

 作中作の作品化。ときどき警句っぽいのが挟まるのはそういうわけか。石楠花と蔦とかピースとタイムとかに見られるように、いかにも寓話っぽい話なんだけれど、読み返せばきっといろいろ発見があるのだろう。
 

「特集解説」「続篇シリーズ紹介」柳下毅一郎、「ナボコフ読みの目から眺めたウルフ」若島正、「ウールス人名・地名事典」香月祥宏編
 

「聖キャサリンの祭」「川獺の城」ジーン・ウルフ/中野善夫訳(The Feast of Saint Catherine,1983、The Castle of the Otter,1982)
 自作解説みたいな話かと思っていたんだけど、裏話楽屋話的な話だった。ところで巻末の執筆者紹介を読むと、高野氏の影響で中野氏までが鳥居みゆきにはまってる。高野氏はともかく(?)、中野氏の場合あまりにも訳書から受けるイメージとの差が……。
 

「My Favorite SF」(第34回)高野史緒
 ミハイル・A・ブルガーコフ巨匠とマルガリータ
 

「『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』公開記念 ジョージ・ルーカス・インタビュウ」

大森望のSF観光局」22 トマス・ディッシュの遺言
 

「SFまで100000光年 61 奇跡の勝ちは」水玉螢之丞
 「高校野球(野球全般でなくて)の好きな人はみんなイーガン読めばいいのに」だそうです(^^;
 

「異人遭遇録」北見隆《SF Magazine Gallary 第34回》
 宇宙人に遭遇した人の体験談は、最近はグレイ型宇宙人が多くなった――という巻末の執筆者コメントが、わかるわかる。昔読んだジュニアものなんかには、それは宇宙人じゃないだろ!みたいなのまで混じってた気がするなあ。
 

「MEDIA SHOW CASE」柳下毅一郎小林治・添野知生・福井健太・宮昌太郎・編集部
◆映画では何といっても、店のビデオを消去してしまった店員が自分たちでビデオをでっちあげて「スウェーデン版」だと言い張る『僕らのミライへの逆回転』が面白そう。評者によれば映画自体はいまいちみたいだけど。

吉田親司マザーズ・タワー』、舞城王太郎ディスコ探偵水曜日』、ジョナサン・レセム孤独の要塞』、マイクル・コーニイ『ハローサマー、グッドバイ』、宮部みゆき『おそろし』、宇野常寛ゼロ年代の想像力などなどが気になるところだけど、牧眞司氏は本文よりも巻末コメント「ユイスマンス『さかしま』を読む。これは異端文学というよりも、ナサけないおたく小説。かなり笑えます」の方が面白かった。
 

「地球移動作戦」04 山本弘
 ――三人の尊い犠牲により、地球は迫りくるミラー星の脅威を知った。怒濤の新章開始!(袖あらすじより)

 今回はそれほど大きな展開はなし。なんだか科学啓蒙小説みたいだった。問題は、今月号でみっちり説明された科学情報を、来月号を読むころにはすっかり忘れてしまっている点にある。みんな連載ものってどうやって読んでるんだろうなあ。
 

「なぜ真空で火花が散り、広場で魚人が笑うのか」椎名誠椎名誠ニュートラル・コーナー10》
 「今回はエスエフにあまりからまない」と言いつつ唐突にSF映画の話を言い捨てて馬の話になる。その騎馬戦の話なんだけど、しかしこういう興味のある分野に対するフィールドワークというのか実地検証的な考察はシーナさん見事です。肩肘張らずに鋭いとこ突く。
 

「乱風楓葉 参」谷甲州(霊峰の門15)

「アンブロークン・アロー 第二話」神林長平戦闘妖精・雪風 第三部)

「おまかせ!レスキュー Vol.124」横山えいじ

「SF挿絵画家の系譜 31 大西将美大橋博之
 プラモデルのパッケージ・イラストレイター。これは見たことある気がする。

「サはサイエンスのサ 164」鹿野司
 究極の謎、続き。

「家・街・人の科学技術 22」米田裕「VOICE TEXT」
 音声合成ソフト。へえぇ。こういうのはなかなか越えられない壁だと思っていたんだけど、もうけっこう実用的なのか。
 

「センス・オブ・リアリティ」
「いかなる星の下に」金子隆一……一つの仮説やデマを丸飲みにする人たちの話から、大量絶滅についての新説の話を経て、イーガンの話にもなる。
「「医師不足」の裏側にあるもの」香山リカ……教育の場合と似ているような気がします。教師いじめ医師いじめが流行れば、こうなるというか。
 

野田昌宏追悼」
 SF小僧ではなかった自分としては、この人の偉大さがよくわからないんだよなあ。SF界の植草甚一みたいなポジションだったのかな?
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  『SFマガジン』2008年10月号
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