引き続きワールドコン特集ということで、今月号ではゲスト・オブ・オナーのデイヴィッド・ブリン「スカイ・ホライズン」掲載&「ワールドコンの歩き方」掲載。
「スカイ・ホライズン」デイヴィッド・ブリン/中原尚哉訳(Sky Horizon,David Brin,2007)★★★★☆
――マークはこれっぽっちも信じていなかった。数学クラブの連中がETを飼っているという噂は。前方にパトカーが駐まっていた。数学クラブの副部長の家があるブロックだ。研究所のバンも二台駐まっている。突然車のドアがノックされた。数学クラブのトム・スペンサーだ。「ゼノがさらわれたんだ」「だれ?」「ゼノアンスロポイド。ギリシア語で、“外から来た人間に似たなにか”という意味さ」
ハイスクールものの体裁と雰囲気をまといながらも、中身はけっこうハードなコンタクトもの。コンタクトに置かれた人間の状況と判断を描きながら、人類の選択そのものを無化してしまうような展開が意地が悪い(いや、作者が、じゃなくて宇宙人が、ね)。クレメンツ先生の授業を受ければ、歴史の重要性とともにSFの重要性も理解できる(?)。〈Colony High〉シリーズの第一作とのこと。今のところシリーズはこれ一作のみ。
「My Favorite SF」(第22回)北野勇作
北野氏の一冊は星新一『N氏の動物園』。いいなあ。本屋の棚の本をかたっぱしから引っぱり出し、筒井康隆や小松左京を見つけられるなんて。
「おまかせ!レスキュー」112 横山えいじ
「乱視読者のSF短篇講義」若島正(第6回 シオドア・スタージョン「海を失った男」)
今回は若島氏の読みというより、若島氏の生徒による読み、であるが優れていることに変わりはない。科学SF(ヘンな表現だが)としての「海を失った男」。
「大森望のSF観光局」10 ワールドコンまで半マイル
いつのまにやらもう十回か。三省堂のSFトークショーの話と、円城塔芥川賞待機の様子と、宇野常寛の話題。
「ゼロ年代の想像力 「失われた十年」の向こう側 04」宇野常寛★★★★☆
ようやくあらすじ紹介が終わり、次のステップへの第一歩です。これまでの三回で散々説明されてきたとはいえ、「セカイ系」「新伝綺」と「引きこもり」「決断主義」という異なるラインの用語をすりあわせてる(かに見える)のが何か違和感ある。世間的にはどっちも「セカイ系」だものね。が、「セカイ系」とは、「自分ではなく他人(戦闘美少女)に決断させ、そして彼女に無条件で必要とされることでその結果だけを享受しようとする態度に他ならない」という一節を読んで納得。
次回からいよいよ本題。「謙虚でエレガントなバトルロワイヤルへの参加」。
「(They Call Me)TREK DADDY 第06回」丸屋九兵衛
「祓魔師娘」帝国少年《SF Magazine Gallary 第22回》
「「エヴァンゲリヲン新劇場版・序」ついに公開」
エヴァにもガンダムにも興味はなかったんだけど、宇野常寛の連載を読んだあとだと見てみたくなるな。
「ギートステイトの世界」
東浩紀+桜坂洋による未来予測小説の紹介。「ゲームプレイ・ワーキング」という発想、やだなあ。でも実際、一度言っただけじゃできない、自分じゃ判断できないバイトとかばっかりだものな。その都度これやって、と言わなきゃ、やれないの。
「MEDIA SHOW CASE」矢吹武・小林治・添野知生・福井健太・宮昌太郎・北原尚彦
◆今月のDVDは、なんといっても『画ニメ』の一作『H・P・ラヴクラフトのダニッチ・ホラー』です。とかいいつつラヴクラフトは苦手なのだが(^o^;。
「SF BOOK SCOPE」林哲矢・千街晶之・牧眞司・長山靖生・他
◆風野春樹氏が、ケータイ小説にもついにSFが登場!という話題。貞次シュウ『地球最後の24時間』。中身はまあケータイ小説のようです。それと鏡明『不確定世界の探偵物語』。評論家と思ってたら小説だった。
◆普段はラノベは読まないのだけど、ここまで絶賛されては読まずばなるまい。小林めぐみ。まずは徳間デュアル文庫で出ている『宇宙生命図鑑』または笹川氏も紹介している『魔女を忘れてる』かな。
◆海外は今回も話題作目白押し。ティプトリー『輝くもの天より堕ち』、イルミナティ完結編『リヴァイアサン襲来』、ケリー・リンク『マジック・フォー・ビギナーズ』。内容紹介とかを見ても、大好きな「しばしの沈黙」に触れられていないから不安だったんだけど、よかったちゃんと収録されているようです。『トランスフォーマー』のノヴェライズすら「懐かしさ以外の読むべき部分が皆無」と言われると何だかすごい作品みたいに見える。
◆国内では高原英理『神野悪五郎只今退散仕る』あたりをチェック。高原英理は『ゴシックハート』の続編『ゴシックスピリット』が九月刊行予定。出版社が変わって装丁も……う〜ん、こういうイメージですか。。。ゴシックって。。。
「小角の城」(第13回)夢枕獏
「這うもの吸うもの齧るもの」椎名誠《椎名誠のニュートラル・コーナー04》
「嫌いな生き物」といえば「蜘蛛派」と「蛇派」という話から、今回は主に虫の話。世界にはとんでもないところがたくさんあるんだなあ。というか日本も。
「罪火大戦ジャン・ゴーレ」(第33回)田中啓文
「好野攪乱」(霊峰の門 第十一話)谷甲州
「何かが違う」杼屋猶人《リーダーズ・ストーリイ》
久々にいつもと違う名前。この長さだからついオチのある話にしてしまいがちだろうに、オチがないのが新鮮。
「近代日本奇想小説史」(第63 『ホシナ大探偵』と『呉田博士』ほか)横田順彌
押川春浪『ホシナ大探偵』は「フランシス・カーファーックスの失踪」の翻案だそうだけど、引用を読むかぎりでは面白そう。味がある。清風草堂主人『金髪美人』も読みやすい。こちらは『ルパン対ホームズ』の翻案。三津木春影『呉田博士』はホームズとソーンダイクの翻案だそうだが、これはちょっと読みづらい。そもそもの原作がつまらない『金髪美人』はともかく、『ホシナ大探偵』は読んでみたいなあ。青空文庫頼みかな。
「MAGAZINE REVIEW」〈F&SF〉誌《2007.3〜6》香月祥宏
四月号はジーン・ウルフ特集。ウルフの新作「Memorare」のほか、ニール・ゲイマンらのエッセイを掲載。エッセイは『F&SF』ホームページでも閲覧可能とのこと。9月号にはテッド・チャンの新作『The Marchant and the Alchemist's Gate』掲載。これはすでに単行本も刊行されてるそう。
「SF挿絵画家の系譜」(連載19 アートショー(前編))大橋博之
この連載もワールドコン篇です。
「サはサイエンスのサ」152 鹿野司
スローガラス。へえ。読んでみたいなあ、ボブ・ショウ『去りにし日々、今ひとたびの幻』。サンリオってことは拾ってくれるとしたら創元社かな。『SFマガジン』500号記念号にも短篇が掲載されてるみたいなので、バックナンバーを漁ってみるか。
「家・街・人の科学技術 10」米田裕
青色LEDから白色LEDへ。
センス・オブ・リアリティ」金子隆一・香山リカ
◆「ゲームのエンダー」金子隆一……「サはサイエンスのサ」のスローガラスにしてもそうだけど、科学者ってのはいろんなことを考えるなぁ(^^)。チェッカーの勝負で確実に引き分けに持ち込む方法を、五十台のコンピュータで十八年かけて発見したのだそうだ。チェッカーの場合、あり得る盤面状の総数は50垓。将棋の場合は10の200乗だそうである。
◆「大横綱と精神科医」香山リカ……お。さっそく朝青龍の話です。言われてみると、いきなり精神科医に診察させるというのがすごいな。スポーツの世界では今はそういうものなのかな。まあアメリカでは棒を投げれば精神科医なんだろうし、癒し系の延長としてカウンセリングを考えている人も昨今では多そうだけど。
「飯野文彦インタビュウ」
ホラー大賞最終候補作『バッド・チューニング』刊行記念インタビュー。元ネタはミッキー・スピレインだったとかいう裏話が読める。
「蝉とタイムカプセル」飯野文彦 ★★★☆☆
――ふと机に目を向け、そこに一通の葉書が置いてあるのに気づいた。小学校時代の同窓会通知である。実のところ、わたしには子供の頃の記憶がない。母親にたずねると「あんたがあの頃のこと、忘れるわけないでしょ。いつも『最高のクラスだ、最高の仲間たちだ』って自慢してたじゃない」
う〜ん、インタビューを読むと面白そうだったんだけど。こういうのを読んで、蝉である必然性がないじゃん、とか思ってしまうような人間には向いてないんだろうな。モンスター好き、クリーチャー好き、フリーク好きありき、なのだ。