「青の広間の御手洗」★★★☆☆
――ストックホルム大学からのファックスを読んで、私の口はあんぐりと開いてしまった。ノーベル賞! 御手洗のチームの受賞が決定したのだ。
初出は『御手洗潔攻略本』。いかにも「最近の」島田御大が書きそうな話ではあるが、どうせパスティーシュやるなら初期御手洗をやってくれというのが本音。
「シリウスの雫」★★★☆☆
――天井から地面に上る逆さまの階段がつけられた太古の石造建築。そこに全身紫に塗られた老人の死体が逆さまに置かれていた。
初出は『パロディ・サイト事件(下)』。まったく覚えていなかった。巨人の建築物はいかにも本家らしいが、トリックは柄刀印。詩ではなく説明なのである。
「緋色の紛糾」★★★☆☆
初出は『贋作館事件』。タイトルだけかと思ったら内容も『緋色の研究』なんですね。こういうホームズ・パロディは初めてなので面白い。ホームズが日本で活躍するのだが、タイムトラベルでもなければ文化的ギャグを飛ばすおふざけでもなく、ホームズ譚そのものがもともと日本を舞台に書かれていて、それを模倣したかのようなパロディ/パスティーシュ(本作はパロディ色が強いけど)。一作だけだと意味不明の怪作なのだが、三作続けられると不思議に説得力がある。時代考証やミステリのマニアに淫しただけの芦辺拓のパスティーシュと比べても、対象への愛情が感じられて、読んでいて快い。
「ボヘミアンの秋分」★★★★☆
これは「緋色の紛糾」以上に原典「ボヘミアの醜聞」を忠実になぞった作品。そこにオリジナルの殺人事件がからんでくるのですが、犯人探しが金田一少年やコナンや古畑みたいにお手軽なのはいただけない。
「巨人幻想」★★★★★
――霧のなかを宿泊先に向かっていると、巨大な物体が動いているのが見えた。無事に家に帰り着き、家の主人や御手洗と談笑していると、巨大な咆吼と足音のようなものが聞こえ、庭先を何かが通り過ぎていった。庭には巨人の足跡としか思えないものが……。やがて石岡と御手洗は、ホームズとワトスンと名乗る二人組に出会い……。
御手洗とホームズを共演させるという、豪腕というのも追いつかないような力業をやってのけた奇っ怪な傑作。『恐怖の研究』のモタモタ感を味わわせられるよりは、この方が断然に楽しいのは事実。いくつもの「巨人」の謎を惜しげもなく披露してそれぞれに別の解答を用意している贅沢さは、御手洗ものの名に恥じない。ホームズ・パートと御手洗パートに文体上の違いがほとんどなく、同じ人物が章ごとに名前を変えているだけみたいな印象なのはご愛敬。
「石岡和己対ジョン・H・ワトスン」
島田荘司の愛情あふれる珍解説。石岡やワトスンから柄刀一に手紙が届くだけでなく、石岡とワトスンが手紙のやり取りをしてしまう悪ノリっぷり。
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