『ブラン・マントー通りの謎』ジャン=フランソワ・パロ/吉田恒雄訳(ランダムハウス講談社文庫)★★★☆☆

 『L'énigme des Blancs-Manteaux』Jean-François Parot,2000年。

 副題に「ニコラ警視の事件1」とあるとおり、現在シリーズ第三作まで邦訳されてます。

 ルイ十五世治世下のフランスが舞台のミステリです。著者は18世紀フランス史の専門家というので、フィクションではあるけれど参考文献みたいなつもりで購入。

 サルティーヌがサルティンと表記してあって不思議な感じ。ニコラが死刑執行人のサンソンと握手をして感動される場面に既視感があったのでしばし考えたところ、ああ、デュマでした。『マルゴ』だったか。

 サンソンは解剖学の知識を学び(本書では、囚人を楽に死なせてやりたいという思いから、と説明)、まだ未発達だった医学や医者に代わって、本書では非公式に検屍をおこなってもいます。その人なりの特徴を活かした実在人物のこういう使われ方はうれしい。

 移動便器屋という面白い職業の人間が登場します。当時のパリの衛生状態がひどかったことは知っていましたが、こんな商売があったとは。

 立場的には主人公ニコラの部下に当たるブルドーが、『虎の牙』のマズルーやメグレの部下のリュカやジャンヴィエあたりを思わせるポジションで、最近よくあるスピンオフで「ブルドーの事件簿」みたいなのがあったら、むしろわたしはそっちの方が読みたいかも。

 イギリスとの戦に明け暮れていたルイ15世治下のフランス。ブルターニュから上京し、パリ警察総監の下で見習い警視を務める若きニコラ青年は、ある警視の失踪事件の担当を命ぜられ困惑していた。なぜ経験もない自分が任命されたのか? 悩みつつも捜査を開始したニコラだが、失踪事件はやがて陰惨な殺人事件へ、そして王宮をもおびやかす一大事へと発展する……。18世紀のパリを鮮やかに描いたフランスの人気シリーズ登場!(カバー裏あらすじより)
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