『ターミネーター3』(Terminator 3: Rise of the Machines,2003年,米)★★☆☆☆

 ジョナサン・モストウ監督。ニック・スタール(ジョン・コナー)、クレア・デーンズ(ケイト・ブリュースター)、アーノルド・シュワルツェネッガー(T-850)、クリスタナ・ローケン(T-X)出演。

 いまさら観ましたが、いくらなんでも笑えるくらいに劣化がひどい。

 人間軍のリーダー・ジョン・コナーを抹殺するため機械軍が未来からターミネーターを送り込む――という基本線は変わっていません。前作から十年後という設定で、サラは既に死んでおり、起こるはずだった核戦争も回避されたはずだったのですが、ふたたびターミネーターが現れ、未来のコナーの部下たちを殺してゆきます。ドラッグ漬けになっていたジョンは、診療所に忍び込んで犬用の薬を盗んだところをケイトに見つかってしまいますが、そこに新型ターミネーターが登場。ケイトは未来の部下の一人だったのです。そこにシュワちゃんターミネーターが助っ人に登場。カーチェイスして逃げ回り、すべてのきっかけとなる「スカイネット」の起動を阻止しようと三人は米軍基地に――。

 相変わらずギャグとヒューマニティと決め台詞がすべってます。新型の胸がふくらむとことか、シュワちゃんの星形サングラスとか。シュワちゃん悩むとことか。むしろ知事がムキムキ裸なことに笑た。

 前半はかなり時間を費やしたド派手なカーチェイス。せっかく新型が登場したのに、新型の性能をアピールすることなく、ただのカーチェイス。本来ならはらはらするような場面なのでしょうが、何せ二人ともサイボーグという設定だから車や建物に平気でガンガンぶつかりまくってて、派手なわりには平板なシーンでした。

 その後、実はこのカーチェイスが新型の新性能のお披露目だったと明らかになってびっくり。すべての機械を操ることができるんだそうです。つまり二台の車だけでなく、操った車も参加してカーチェイスしているという……。それって、凄いの……? 撮影技術的には、人の乗っていない車が猛スピードで走ってるとかいうことなのかもしれないけど。。。

 ふたたびターミネーターが現れたことに戸惑い、核戦争は回避されたはずでは?とたずねるジョン。「未来は変わらない、延期されただけだ」と答えるターミネーター。ここで新型の性能や、ケイトとジョンの未来についてなどひとくさり説明があります。

 ここもなぁ……ジョンを見つけられなかったから、代わりにジョンの部下を殺そうとしている、という設定がイマイチ活かされてません。ケイト&ケイト父を話に絡ませたかったんでしょうけど、安易というか……せめてジョンとは無関係のところでもう何人か殺されたあとで、実は――みたいな進め方はできなかったのでしょうか。そうすると歴史が変わっちゃうのか。でもいきなりジョンとケイトに出会われても。

 さて、そんなカーチェイスと平行して、米軍基地ではなぜかコンピュータの調子が悪く、よくわかりませんがそれはウィルスの仕業らしいという話になっています。そこの長官がケイト父。そしてなぜかウィルスを駆除するには開発中の「スカイネット」を起動するしかないという話になっています。この描写がさすがに適当すぎてシラケることはなはだしい。機械の叛乱が前提の話なんだから細かいところは見て見ぬふり、というのがたぶん正しい態度。でもこういう細かいことが気になってしまうほど話がつまらないのも確か。

 で、何だかよくわからないうちに、スカイネットのスイッチを押させるな!という話になって、軍に乗り込んでゆく三人ですが、時すでに遅し、スイッチは押されてしまいました。

 ここからもぱっとしません。まあスイッチを入れてもいきなりすべてのコンピュータが乗っ取られるわけじゃないというのはわからないでもないけれど。大変なことが起こったらしいのが画面からまったく伝わってきません。戦闘機を動かしているのはスカイネットではなく新型ターミネーター? とにかく磁場装置も飛行機の計器も無事なのでだらだらと逃避行を続ける三人。

 しかしここで、ようやく新型の性能らしきものが発揮されます。シュワちゃんの命令を書き替えて元の殺人マシーンに戻そうという、ターミネーター=機械という設定を活かした新型の作戦です。なのにせっかくのクライマックスも、あっさりヒューマニティの勝利。人間だもの。

 要するにファミリー向けなんでしょうけど。ファミリー向けといえば、射殺されるシーンでは銃声だけだったり血糊が映されるだけだったり直接射たれるシーンはないのに、ターミネーターが腕で身体を突き刺すシーンはしっかり描かれていて、もしかするとこれが銃社会アメリカのコードなのかと、笑ってしまいました。

 瀕死のケイト父に助言され、スカイネットを止めるべくクリスタル・ピークへ向かう一行。追ってくる新型。ここでようやく新型の見せ場があったかなあという印象です。個人的にはターミネーターの一番の見どころって、『1』の最後で骨組みだけになっても追いかけてくるところだと思っていたので、それを髣髴とさせるクライマックスはちょっと嬉しかった。まあそこもあっさり終わっちゃうんだけど。もう一つ、毎回「不死身」のターミネーターをどうやって倒すのかというのも大きな問題だと思うのですが、伏線(というほどのものではないけど)が描かれていたのは今回が初めてだったように思います。ぱっとしない映画のわりには変なところでちゃんとしてる。

 せっかくクリスタル・ピークにたどり着いたジョン・コナーとケイトでしたが、スカイネットは止めることなどできず、ケイト父が教えたのは核シェルターの場所だったというオチ。ン十年前の映画のようなチープな終末がある意味では見どころです。核シェルターが作られたのはン十年前なんだから、シェルターが古くさいのは正しいといえば正しいのだろうけれど。なんか『猿の惑星』とかそのころのセットみたいだと思ってしまいました。

 そういうわけで核戦争は起こってしまったわけですが。結局は未来は変えられたのか変えられなかったのか……。ジョン・コナー君のナレーション曰く「未来は変えられる」そうですが、変わってませんよ。未来は変えられないけど、「生きよ」って話になっちゃってますよ。

 新型ターミネーターの新しさがまったく活かされてないところ、前半のカーチェイス以外のアクション・シーンは基本的にコメディ・タッチなところ、いくら何でも話の筋が投げ遣りすぎるところ、ががっかりでした。まあでも、似非ヒューマニティのせいで台無しになっていた『T2』と比べると、初めからぐだぐだな分、面白さの起伏は少なくて、よく言えば安定している映画でした。
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  『ターミネーター3


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