特集は伊藤計劃以後。「伊藤計劃」特集ではなく、伊藤計劃「以後」特集です。
一応は伊藤計劃をエポックメイキングと捉えてのうえでのことなのですが、特集本文中には「3・11以後」という表現も見え、要するに「これからの日本SF」特集のようなものです。ジャンルとしてのSFの未来には興味がありませんが、ゲームや音楽などいろいろや分野の近況のようにもなっていました。
伊藤計劃周辺の関係者によるトークショー、上田早夕里インタビュウ、各分野からの今後の展望エッセイ、次世代作家ガイド。上田早夕里がこういう発想から作品を作っているのかと興味深い。アイデアを肉付けする筋肉がある人なんでしょうね。
◆書評など
牧眞司氏が紹介しているセルヒオ・ピトル『愛のパレード』は、「探れば探るほど、謎は深まってしまう。黒澤明『羅生門』のように、いくつもの解釈が出てくるのだ」という作品。森山和道氏が紹介している佐藤実『宇宙エレベーターの物理学』は、「系統だてて物理を学ぶのではなく、教科書で学ぶ法則や原理が『世界を理解するための強力な武器となることを知ってもらいたい』」という、「高校+大学教養くらいの物理学の概念をお勉強しようという本」。
「現代SF作家論シリーズ」は、石和義之氏によるル・グウィン『闇の左手』論。
SF評論賞選考委員特別賞受賞作、藤元登四郎「『高い城の男』 ウクロニーと「易経」」掲載。
「乱視読者の小説千一夜(第7回) ポルノ作家としての若い芸術家の肖像」若島正
バリー・マルツバーグのオリンピア・プレス時代。
来月号の特集は初音ミク。何だかミステリマガジンもSFマガジンもやりたい放題です。
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『SFマガジン』2011年7月号
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