「恥をかく」レジナルド・ヒル/松下祥子訳(Fool of Myself,Reginald Hill,2005)
――親愛なるダルジール警視殿。母ひとりに育てられた息子がマザコンになるのはしかたないことでしょう。ですが思春期がくると、ぼくも女の子というものを発見したのです……。
最初のパラグラフに書かれてあることの意味が、読む前と読み終えてからではがらっと変わる――というのは、ミステリの醍醐味だと思います。
レジナルド・ヒルに手紙を出した恩田陸へのインタビューと、法月綸太郎他のコメント。「ミステリヴォイスUK」もレジナルド・ヒルについて。
内藤陳特集のなかでは、小泉喜美子との内縁生活を紹介した追悼文が、小泉喜美子ファンとしては嬉しいかぎり。
「北緯54.2度の本棚を飛び出す」マライ・メントラインは、『特捜部Q』のコペンハーゲン訪問記。
「誰かが私を狙ってる」クレイグ・ライス/宮澤洋司訳
◆紹介されていた本のなかでは、エストニアが舞台の文学よりのソフィ・オクサネン『粛清』、「冬の怪談とも言えるお話」ヨハン・テオリン『冬の灯台が語るとき』(ポケミス)のほか、松尾由美『花束に謎のリボン』、種村季弘訳『怪奇・幻想・綺想文学集』、神林長平『いま集合的無意識を、』が気になるところです。
『SFマガジン』はイアン・マクドナルド特集。「ソロモン・ガースキーの創世記」、「掘る」、インタビュウ。
「乱視読者の小説千一夜(16)」若島正。フランス文学の英訳者バーバラ・ライトのことなど。
◆パオロ・バチガルピ『第六ポンプ』のほか、香港の小説家菫啓章『地図集』、種村季弘訳『怪奇・幻想・綺想文学集』といった本が紹介されていて、特に『地図集』が気になります。
「錬金術師(後編)」パオロ・バチガルピ/田中一江訳(The Archemist,Paolo Bacigalupi,2011)
――イバラを根絶やしにできる機械を発明したわたしは、市長たちの前でそれを実演した。だが市長たちは機械を悪用し、わたしを監禁して改良を迫った……。
魔法と錬金術をともに活用して逃げ出してゆくシーンが印象的でした。魔法とイバラの設定をこういうふうに活かしたとは。
「第7回 日本SF評論賞 最終選考会採録」荒巻義雄・小谷真理・新城カズマ・瀬名秀明・清水直樹
今回の選考会はおとなしめ。正賞は無しで、優秀賞に上田早夕里を論じた渡邊利道「独身者たちの華 上田早夕里『華竜の宮』論」が選ばれました。