『からくりサーカス』『うしおととら』『ルート225』『草子ブックガイド』『少女ファイト』『放浪息子』14

からくりサーカス』全43巻 藤田和日郎小学館サンデーコミックス)

 『うしとら』は超がつくほど好きというわけではなかったのですが、『からくり』は読んでびっくり、泣かせの技術や絵の上手さなど、格段に腕が上がっていました(エラそうな言い方になってしまいましたが。。。)。何よりよくもここまでつじつまを合わせてきたものです。フランス編が始まったときには、黒賀村のことはなかったことになったとばかり思ってしまいましたが、そうきましたか。フランス発祥のからくりのはずなのに、どうして黒賀村の伝統みたいになっているのか、しかも才賀父が陰謀に絡めるのか――エレオノールが一味ならどうしてしろがねについて知らない/発言がないのか――説明どころか、何もかも一つにまとめてしまうとは。

 泣かせについても実を言うと、『うしとら』で泣いたのは「ブランコをこいだ日」だけだったのです。金票さんの最期は泣けなかった。なんでかな。だけど「ブランコ」自体がエピソードで泣かすというよりは、構成で泣かせるタイプの話なので、泣かせの「技術」という意味では当時から抜きん出たものがあったのですね。個人的にいちばんの場面は、パンタローネの「歌も…」のシーンなのですが、特筆すべきはジョージです。●サングラスに面長の顔、カールした髪、という、およそ人気の出そうにないビジュアル。自信家のくせに出てくるたびにこてんぱんにやられる、噛ませ犬というのも可哀相なくらいな惨めっぷり。そんなキャラで感動させてしまうのだから恐ろしい。周りに阿紫花や法安がいるからこそ、というのもありますが。

 その法安さん、名脇役です。前述のパンタローネのシーンもこの人あってこそですし。そしてパンタローネですが、まずビジュアルがかっこいいのです。しわなのか木彫りの彫りなのか髪なのか髭なのか判然としない顔に、喜劇衣装。アルレッキーノが基本的に二枚目しかこなせないのに対して、パンタローネはパントマイム、悪役、決めポーズ、何でもこなせます。
 

『ルート225』藤野千代・原作/志村貴子・漫画(講談社シリウスコミックス)

 芥川賞作家・藤野千代の原作を、志村貴子が漫画化。原作ものかぁ、と思いましたが、読んでみれば、志村貴子本人の作品そのものかとまごうような内容でした。

 エリは弟・ダイゴを迎えに行った帰り、母と父のいない「ここ」に来てしまう。唯一通じる電話だけが、両親とのつながりだったが……。

 時間の流れの描き方や、モノローグの使い方など、この人ならではです。「ここで冒頭に戻るわけです」「〜なわけで」といった台詞回しは使いこなせばこれほどかっこいいのかと思いました。

 タイトルとなっているルート225とは、国道225でありルート225=15歳のよし。あろうかもしれない未来、はいずれにせよ未知のものですが、あったかもしれない過去とあるかもしれない現在、を経験したことで、大久保ちゃんのような小さな何かを変えることも、できるのかもしれません。
 

『草子ブックガイド』(1)玉川重機(講談社モーニングKC)

 話題になっていたので読んでみました。本好きの草子が古本屋「青永遠屋《おとわや》」と知り合い、素朴な感想で周囲の人々に感動を与えてゆく……という内容。

 最近のスポーツ漫画は技術的な面や心理的な面にも説得力を満たすだけの筆が割かれていて、読み応えがあります。一昔前なら、「そのスポーツが好きだからみんな幸せ」――本書はたとえて言うなら、そんな懐かしいスポーツ漫画タイプの漫画でした。このタイプの作品のよいところは、ストレートなだけに、対象となるもの(本書なら本)を主人公が好きだというのがまっすぐ伝わってくるところです。個人的にはもうちょっと物語的にも読み的にもひとひねりあっていいかと思いますが。。。ロビンソン漂流記、カポーティ山月記西行。いかにも青年誌といった絵柄それ自体が、懐かしい古本の世界のようでした。
 

少女ファイト日本橋ヨヲコ講談社イブニングKC)

 タイトルと表紙イラストのぴっちりしたユニフォームから、てっきりレスリング漫画かと思っていましたが、バレーボールの漫画でした。

 線が太くベタののっぺりとしたイラストのような独特の絵柄なのですが、その静止画風の絵柄とは裏腹に、登場人物の動きが生き生きとしています。動きの流れのなかで躍動感のある漫画なら数多くありますが、止め絵でここまで表現されているのはあまり記憶にありません。筋肉の一つ一つまで人体を把握して描いているとしか思えない躍動感でした。
 

放浪息子』14 志村貴子

 今回もオガツカヅオの巻末漫画つき。帯の惹句にひるむも、オマージュだと知り、ほっとする。とはいえカバーを見ると、二鳥くんも成長しました。もう女の子には見えません。。。ちーちゃんたちの出番が少ないことに、違う学校になるというのはこういうことだったよなあ、とさびしくなりました。14巻いちばんの見所は、高槻くんの心境に変化が訪れたところだと思います。スタートしたときは、女の子になりたい男の子と男の子になりたい女の子の話だったのに。。。
 

     


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