『憧れの少年探偵団』秋梨惟喬(創元推理文庫)★★★☆☆

 以前『推理短編六佳撰』に那伽井聖名義で収録されていた「憧れの少年探偵団」を「クリスマスダンス」と改題改訂のうえで、シリーズ化したものです。

 つまり「少年探偵団」といっても乱歩の少年探偵団と関わりがあるのは第一話だけで、残りの四篇については乱歩とは無関係の小学生五人による謎解きものでした。

 密室となった自宅で老人が絞め殺されていた殺人事件が扱われた「クリスマスダンス」、ヒーローショーの最中に蜘蛛男の着ぐるみを着た人物に殴られたが誰もにアリバイがある「桃霞少年探偵団対清流戦隊」、人に危害を加えて名刺代わりにカードを置いてゆく愉快犯「ルナティックを捕まえろ」、誘拐されていない娘に二十万円の身代金を要求される「不愉快な誘拐」、男に追われてケーブルカーに乗った女が途中で姿を消してしまう「異次元ケーブルカーの秘密」の五篇収録。

 前述『推理短編六佳撰』で北村薫も評価していた密室トリックと少年探偵団解釈が楽しい「クリスマスダンス」、表向き見えていたいくつものものがくるくると反転する「ルナティックを捕まえろ」、これまた単純なトリックが楽しい「異次元ケーブルカーの秘密」がよかった。

 小学生を取り巻くあれやこれやが『六佳撰』のころからはアップデートされているのに、「『こち亀』の両さん」だけはもとのままなのがご立派。

  


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