『ギリシア棺謀殺事件』エラリー・クイーン/石川年訳(グーテンベルク21)

 『The Greek Coffin Mystery』Ellery Queen,1932年。

 かの著名な「操り」テーマの原点――ではありますが。初めてこういうタイプの作品を読んだ読者は興奮しただろうなあ!とは思うものの、やはり新本格を読んだあとで原点を読むと、物足りない。

 屋敷内の墓地でおこなわれた美術商ハルキスの葬儀から一歩さきに邸内にもどった弁護士ウッドラフは、ハルキスの寝室の金庫内に保管してあった新しい遺言書が、手提げ金庫もろとも紛失しているのを知って度を失う。たった五分間のうちの出来事だった。エラリーは「論理的に」、遺言書は棺の中にしかありえないと推論し、棺を掘り出す。だが、そこに見つかったのは……ハルキスの死はその後につづく殺人交響曲の序曲にすぎなかった。クイーン「国名シリーズ」第4弾。重厚な代表作。

 


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