『ミステリー・ゾーン DVDコレクション』10・11・12・13・14(アシェット)

『ミステリー・ゾーン』(10)「マネキン」「キング・ナイン号帰還せず」「家宝の瓶」

「マネキン」(The After House,1960.6.10)★★★★★
 ――広告にあった指貫を買いにデパートに来たマーシャ・ホワイトは、エレベーターで9階に上がったが、そこには何もなかった。応対する女性店員も何だか様子がおかしい。不審に思いながら帰ろうとしたが、指貫に傷がついていることに気づき店員に伝えるが、このデパートには9階などないと言われる。

 最終的には怖い話ではないのですが、やはり人形というのは生理的な怖さを引き起こします。マーシャがヒステリックではない理知的な風貌・演技を見せていることもあり、感情に頼らない視覚的・時間的なサスペンスが生まれていました。
 

「キング・ナイン号帰還せず」(King Nine Will Not Return,1960.9.30)★★☆☆☆
 ――イタリアを爆撃するため飛び立ったキング・ナイン号だったが、任務を果たすことなく砂漠に不時着した。気絶から目覚めたエンブリー機長は、自分がたった一人残され、乗組員が誰一人いないことに気づく……。

 この作品から第2シーズン。ナレーションが変わりました。サーリングも姿を見せます。慣れるまで違和感があります。この作品は一人芝居の舞台劇のような大胆な構成となっていて、俳優の演技力が勝負とも言える内容なので、吹替えで観るのにはつらいものがありました。
 

「家宝の瓶」(The Man in the Bottle,1960.10.7)★★★☆☆
 ――古道具屋のアーサー・キャッスルが引き取ったのは何の変哲もない空き瓶だったが、白い煙とともに魔人が現れ、望みを四つ叶えるという……。

 一つ目の願いは試しに。二つ目の願いは深く考えずに欲望の赴くままに。ここまではお約束です。では慎重になった人間が次にどんな願い事をするか――と思ったら、何でしょうこのアバウトな望みは……。むしろツッコミ待ち、的な。願いの行く末よりも、主役のおしどり夫婦ぶりにほっとしました。ちなみに冊子によれば当時賞金の税率は本当に90%だったそうで、夢も何もあったもんじゃありませんね。
 

『ミステリー・ゾーン』(11)「鏡の中の男」「機械嫌い」「嵐の夜」

「鏡の中の男」(Nervous Man in a Four Dollar Room,1960.10.14)★★☆☆☆
 ――意気地なしな小悪党のジャッキーは、ジョージから殺しの命令を受ける。困り果てたジャッキーは鏡のなかの自分に向かって愚痴をこぼすが、すると鏡のなかから……。

 第2シリーズに入ってナレーションも変わり、この作品はBGMも不必要にうるさいです。第2シリーズ第一話「キング・ナイン号帰還せず」、この「鏡の中の男」と、一人芝居のような作品が続きます。第2シーズンに入って人気も出て、ドラマ性のある作品にもチャレンジできるようになったということなのかもしれませんが、これまでのところでは、肝心のアイデアが失われてしまいました。気弱な男が鏡のなかの強気な分身と入れ替わる、というただそれだけの話です。もともとやる気のなかった小冊子ですが、この号になって文章が格段に減ってしまい、写真のキャプションもなくなり、エピソード・ガイドとは名ばかりのただのあらすじ紹介となっています。
 

「機械嫌い」(A Thing About Machines,1960.10.28)★★☆☆☆
 ――毒舌評論家のフィンチリーはノイローゼになりそうだった。テレビやラジオが勝手についたかと思うと、出て行けと言い始める。車やタイプライターも勝手に動き出すのだった。

 これもただ機械が持ち主を追い出そうとして勝手に動き出すというただそれだけの話です。画面からサスペンスや俳優の迫力が消えてしまいました。子どもがアイスキャンディを舐める場面の執拗なアップには何の意味があるのでしょうか……。とはいえ車に追いかけられるクライマックスだけはよかったです。
 

「嵐の夜」(The Howling Man,1960.11.4)★☆☆☆☆
 ――旅の途中で道に迷ったアメリカ人エリントンは、ようやく見つけた僧院で休憩を求めるが、ジェローム神父にすげなく拒否され、倒れてしまう。目が覚めたエリントンは、牢に入れられている人間から、神父たちは危険だから気をつけろと言われるが……。

 チャールズ・ボーモント「叫ぶ男」原作・脚本ですが……。枠物語形式を採用しているという時点で、古くて安っぽい怪奇ムードが自覚的なものだというのはわかりますが、今の目で見るとコントの衣装みたいで笑ってしまいます。これまで悪魔や魔人に現代的なスーツの装いをさせてきた『ミステリー・ゾーン』なのに。
 

ミステリーゾーン』(12)「みにくい顔」「素晴らしい未来」「合成人間の家」

「みにくい顔」(The Eye of the Beholder,1960.11.11)★★★★☆
 ――ジャネット・タイラーはみにくい顔を何度も手術したが、そのたび失敗していた。11回目の手術。これが失敗したら、みにくい顔の人間が住む集落で隔離されて生きていくしかない……。

 第2シリーズようやく面白い作品が登場しました。さすがにビジュアルはもうちょっと何とかならなかったのかと思いますが。独裁者の演説を聞いていたら、みんな髪型を金正恩と同じくしようというニュースを思い出しました。それにしてもとうとう小冊子の解説欄から、役名も消えて俳優名だけになってしまいました。。。
 

「素晴らしい未来」(Nick of Time,1960.11.18)★★★☆☆
 ――食堂の卓上にある占いを引くと、嘘のようにぴたりと当たった。占いに取り憑かれたドンは、恋人の止めるのも聞かず、何度も何度も占いを引き始めた。

 リチャード・マシスン脚本。不思議や怪異が発生しない作品では、一つのことを不可思議に解釈するもしないも登場人物の心の持ちようで、だからこそ希望と絶望の交錯するラストが印象的でした。
 

「合成人間の家」(The Lateness of the Hour,1960.12.2)★★★☆☆
 ――ローレン博士は自らが作りあげた合成人間たちと暮らしていた。嫌な世間と干渉せずに済むように。娘のジェイナはそれが我慢できなかった。

 合成人間というSF的な道具立てを用いながら、SF的な映像はいっさい登場しないという点で画期的な作品です。予定調和的に見えながら、どこか大事な感情が抜け落ちているローレン博士の心がかいま見えるラストには、ぞっとしました。
 

ミステリーゾーン』(13)「二つの夜」「奇妙なカメラ」「弱き者の聖夜」

「二つの夜」(The Trouble with Templeton,1960.12.9)★★★☆☆
 ――俳優のテンプルトンは愛しい妻に先立たれ、奔放な若い後妻とは上手く行っていなかった。駆け出しの演出家と衝突し、リハーサルを抜け出したテンプルトンは、自分が三十年前に来てしまったことに気づく。そこでは妻のローラも生きていたが……。

 思い出補正、という話です。
 

「奇妙なカメラ」(A Most Unusual Camera,1960.12.16)★★★★★
 ――二人組の強盗チェスターとポーラが盗んだのはガラクタばかりだった。だが盗品に紛れこんでいた古びたカメラだけは、5分後の未来を写すカメラだった……。

 漫才みたいな夫婦のののしりあいが楽しく、オチも含めて『ミステリーゾーン』には珍しく軽妙な作品ですが、その洒落たセンスこそは『ミステリーゾーン』らしいものなのでしょう。
 

「弱き者の聖夜」(The Night of the Meek,1960.12.23)★★★☆☆
 ――サンタ役のアルバイトをしているヘンリー・コーウィンは仕事もせずに酒場で酔っ払っていた。恵まれない子供たちに本当のクリスマスを味わわせてやりたいのにそれが出来ないから酒を飲むのだ……とうそぶく。仕事を馘首になり、雪のなか歩いていたヘンリーは、プレゼントの入った袋を見つけた……。

 伏線のないハッピーエンド。サンタになりたかった男がサンタになりました、というだけの話です。
 

ミステリーゾーン』14「縄」「過ぎし日」「因縁も売り物です」

「縄」(Dust,1961.1.6)★☆☆☆☆
 ――酔っ払って馬車で少女を轢き殺したギャレゴーが絞首刑を控えていた日、物売りのサイクスが村に戻って来た。シェリフに向かって息子の命乞いをする父親に、サイクスは魔法の土と称してただの土を売りつけようとする。

 少女の葬列の最中に被害者の父親に向かって小さな娘の口を借りて許しを請うたり、息子が酔っ払って人を轢き殺したことを日々のつらさのせいにして同情を買おうとする父親に、反吐が出ました。小冊子は相変わらずやる気なしです。「『ミステリー・ゾーン』的な不可思議な事件」なんかどうでもいいからいい加減ガイドを充実させてほしいものです。
 

「過ぎし日」(Back There,1961.1.13)★★★★☆
 ――過去に戻ることができたとして、過去を変えることはできるのか。コリガンは友人たちとクラブでそんなことを議論していたその後、自分が1865年4月15日にいることに気づいた。

 ストレートなタイムパラドックスものですが、わかってはいてもハラハラするものです。給仕のウィリアムに関するくだりも、のちのちまで踏襲されるパターンですね。
 

「因縁も売り物です」(The Whole Truth,1961.1.20)★★★☆☆
 ――ハニカットは口八丁の車のセールスマン。だがある老人から因縁のある車を買い取ってからというもの、嘘をつけないようになってしまった。

 サーリングは台詞廻しや会話の応酬が巧みで、「奇蹟」の独特の譬喩や「奇妙なカメラ」の掛け合いなど、台詞だけでも面白い作品がありますが、この作品のセールストークもその一つです。
 

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