『おばけずき 鏡花怪異小品集』泉鏡花/東雅夫編(平凡社ライブラリー)

 なぜか「百物語篇」に収録されている「妖怪《ばけもの》年代記が一押し。開かずの間で気絶した妾が、不義を疑われて主人に惨殺されるという因縁譚のかっこよさ。後ろ手に縛り吊るした妾の首を打つと、重みの関係でくるりと身体が回転して、天井に血染めの足跡がつく場面。妾を讒言した腰元が蜘蛛に這われた跡が、首を絞められた跡のようになっている場面。この昔の言い伝えをもとに、最終的にはオチがつく(幽霊かと思ったら狂人でした)のだけれど、何よりも言い伝えの怖さが半端じゃありません。

 


防犯カメラ