『大空のドロテ 1〜3』瀬名秀明(双葉社)★★★☆☆

 ルパン・シリーズのキャラクターから実在の人物や歴史までが入り乱れる、真説アルセーヌ・ルパン、とでもいうべき冒険絵巻。あの事件の「真相」や「真犯人」が緻密に描かれ、ルパン贋作としてもかなり昂奮する出来になっていました……にもかかわらず、タイトルになっている肝心のドロテが『綱渡りのドロテ』の面影を残すことなく、まったく別のキャラクターになっており、しかも主役かというとそれほどでもなく……という中途半端さが残りました。

 ルパンものが好きな読者からすれば、ルパンもの外伝の『ドロテ』がルパンもの正編になったよ、という嬉しさが立つ作品なのでしょうが、『ドロテ』は『ドロテ』で好きな人間としては、何だか複雑な出来でした。

 とはいいつつ『虎の牙』大好きな私としては、マズルーの「親分《パトロン》」の台詞だけでも大満足。しょぼいと言われる『虎の牙』の犯人も、黒幕(私にとってルパン史上いちばん印象に残った敵といえばこの人なのです)を登場させることでクリアーしていました。

 ことあるごとに描かれる飛行機といいカバーイラストのタッチといい、宮崎アニメを連想してしまうのは私だけではないはずです。しかしながらドロテは闘う少女とはならずに、少女を守るジャン少年の方が主役みたいになってしまったのは――「作者」があの人であるのならしょうがないかなぁ……という気がしないでもありません。

 イジドールやソニアはその後どうしちゃったの……というようなシャーロキアン的なフォローも面白い。

 1919年。フランス・ノルマンディーの丘にやって来た飛行機乗りの少女・ドロテ。何者かに狙われているドロテの手には、あの怪盗ルパンが狙う金色のメダルが握られていた――。少女が翔び、少年が駆け、ルパンが企む。謎と冒険に満ちた大活劇が、いよいよ開幕! 日本SF作家クラブ50周年記念作品。

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