『真夜中から七時まで』モーリス・ルブラン/大友徳明訳(偕成社アルセーヌ=ルパン全集 別巻4)★★☆☆☆

 『De minuit à sept heures』Maurice Leblanc,1933年。

 別巻4は「ルパンを思わせる」人物が登場するという触れ込みですが、『ジェリコ公爵』並みにルパンとは程遠いというのが正直なところです。しかも主人公だけでなく、登場する男の皆が皆、弱みに乗じて女をものにする人間ばかりというのだから、開いた口がふさがりません。さらにはそんな欲望の対象とされる女主人公が、善意のかたまりみたいな無垢な少女で。ばからしくって読んでられません。。。

 バラトフとジェラールは、バーネット探偵社のような、依頼を解決して上前をはねる何でも屋コンビです。ただし、バラトフの目当ては財産、ジェラールの目当ては女、という違いがあります。そんな二人が今回ひょんなことから目をつけたのが、破産寸前のご令嬢ネリー=ローズ。バラトフは寄付と引き替えにネリー=ローズに関係を迫り、ジェラールはバラトフのふりをしてネリー=ローズに近づきますが……。

 殺人事件こそ起こりますが、陰謀や冒険ではなく単なる(物盗り)。メインとなるのは、前述したように、無垢すぎる少女とセコすぎる男たちの恋愛遊戯です。そしてその種の小説についてはルブランは本当に才能がなかったのだなあというのがよくわかりました。

 


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