『ミステリー・ゾーン DVDコレクション』30・31(アシェット)

『ミステリー・ゾーン』30「亡き母の招き」「ロボットの歌」「みならい天使」

「亡き母の招き」(Young Man's Fancy,1962.5.11,ep99)★★★★☆
 ――ウォーカー夫人が死んで一年後。息子のアレックスも結婚することになった。だがアレックスは実家を売る段になって、妻のヴァージニアをそっちのけで母親との思い出の品の数々に浸るのだった。

 リチャード・マシスン脚本。マザコン息子による母親版『レベッカ』とも言えますし、母親の亡霊に憑かれた幽霊屋敷ものとも取れますが、最後には非常にミステリーゾーン的なSF的なオチが待っていました。観ながら『レベッカ』タイプの話だと思い込んでいたので、このオチは完全に不意打ちでした。
 

「ロボットの歌」(I Sing the Body Electric,1962.5.18,100)★★☆☆☆
 ――母親を亡くしたトムとキャロルとアンのため、忙しい父親は乳母ロボットを注文することにした。トムとキャロルは大喜びして「おばあちゃん」と名づけるが、アンだけは打ち解けようとしなかった。

 レイ・ブラッドベリ脚本。自分を置いて死んでしまった母親を「嘘つき」呼ばわりしていたアンが、ロボットが不死身であることを知って安心するという、斜め上すぎて判断不能な作品でした。ロボットに「命」はないけど「心」はあるという前提がご都合主義すぎます。
 

「みならい天使」(Cavender Is Coming,1962.5.25,101)★★★☆☆
 ――落ちこぼれのみならい天使キャベンダーは、あわてん坊でドジでグズなアグネス嬢を助けるよう命じられる。キャベンダーはアグネスをお金持ちにし、盛大なパーティを開くが……。

 『素晴らしき哉、人生!』以来お馴染みの、冴えないおっさん天使です。冒頭のアグネスのドタバタコントは面白かったですが、物質的な幸せが叶う中盤から、精神的な幸せの大切さに気づく終盤にかけては、ありきたりでした。第29号収録のep102「栄光ある引退」が第3シリーズ最終話だったので、次の第31号からは第4シリーズ・第5シリーズになります。
 

『ミステリー・ゾーン』31「おのれの影」「殺すなら私を…」

「おのれの影」(In His Image,1963.1.3,ep103)★★★★☆
 ――アランは地下鉄の駅でうるさくつきまとわれ、信心深い女を突き飛ばしてしまう……。その後、アランはジェスの家を訪れたが、記憶のなかから時間が飛んでいた。アランはジェスをつれて帰郷したが、故郷の町はどこか変わっていた。自分の頭がおかしいのか、周りが間違っているのか、確かめるため訪れた墓場で見たものは、両親の墓碑ではなく「ウォルター」という男のものだった。うわごとで口にしていた名だ……。

 チャールズ・ボーモント原作・脚本。第4シリーズ第1話。また過去や別世界のパターンか――と思わせておいて。ジキルとハイド、ロボットの自我、というアイデンティティをめぐる二つの要素を組み合わせた意欲的な作品です。しかもある程度話が進んでも、物語の全体像が見えないため、目が離せません。【ネタバレ*1】という真相は、そこだけ聞けばずっこけますが、それぞれの葛藤と思惑がぶつかり合う緊張感のあるシーンでした。
 

「殺すなら私を…」(In Praise of Pip,1963.9.27,ep121)★★★★★
 ――散弾で撃たれた兵士が運ばれてきた。「死ぬな! ピップ」マックスはベッドの上で目を覚ました。やくざもののマックスは、一人息子のピップを戦争にとられ、足を洗おうと考えていた。子分のジョージがやらかした不始末の尻ぬぐいをしようと撃たれながらも、ピップに会いたいと願うのだった……。

 第5シリーズ第一話。尺の関係でこの号からは第4シリーズ(45分)と第5シリーズ(25分)のカップリングになるようです。主演のジャック・クラグマンの演技と存在感が光ります。幼いピップとの遊園地の迷路めぐりもベタですがいい演出です。10歳バージョンの子役ビリー・マミーもいい味を出しており、ベタといえばベタな話を、俳優たちの演技力でピシッと身の引き締まった傑作に仕上げた作品だったと思います。
 

 [amazon で見る]
30030  31031


 

 

 

 

*1人造人間は科学者が作ろうとした理想の自分であり、二重人格は機械の故障だった

 


防犯カメラ