『咎人の星』ゆずはらとしゆき(ハヤカワ文庫JA)★★☆☆☆

 装画が『ひとりぼっちの地球侵略』の小川麻衣子。カバーイラストだけではなく、各章の扉イラストも。

 超訳『十八時の音楽浴』はつまらなかったし、SFマガジンのインタビューで各方面に向かって「読まない方が良いです」とわざわざ言っているので、迷ったのですが、読むことにしました。

 著者が原作の成人向け漫画の小説化、とのこと。

 説明的な文章が羅列されるうえに視点がぶれまくり、山形カッコや傍点を多用しまくるので、読みづらいことこのうえない――というのが最初の感想でした。

 しかしようやく100ページを過ぎたころ、本書の設定の一つが明らかにされます。――罪の意識の欠落した死刑囚に情緒を回復させてから〈失いたくない大切なもの〉を最悪の形で失うとともに死刑を執行する。死刑囚であるハヤタに香名子を惚れさせてから二人そろって死を与えるために、宇宙人は地球にやって来たのでした。好きなのに好きと言ってはいけない――これだけ書くとライトノベルセカイ系ド真ん中……なのですが、そこは元がポルノ漫画ということで、性行為はむしろ過剰にやりまくり。

 とにもかくにも設定が明らかになって物語が動き出してからは、文章のまずさも気にならなくなりました。

 ち○こま○こ型の宇宙人が射精しながら襲って来たり等々、あほな場面も多々ありますが(しかしこれがけっこう迫力のある戦闘シーンだったりするのです)、死んだはずの組織のボスの記憶と意思を含むすべての生体情報が我が子の精液に複製保存されていた、というのは、精子の本来の役割からすれば筋が通っている設定のような気もします。

 死刑囚×情緒回復用の関係から、生体情報保存者×借り腹&母親の関係が二重写しになり、遅れてきた全共闘闘士である香名子の母親と革命組織の……ほかにもさまざま過去と現在と宇宙と地球が複雑にからまりあっていました。

 帯に「1991年のリアル・フィクション」「22歳未満の方はご遠慮ください。」とあるように、恐らく当時の固有名詞がかなり登場します。「石ころ帽子」とか「はちみつレモン」とか「湾岸戦争」とか。新興宗教オウム真理教なのかな。

 後日談に当たるDとFの部では、それが顕著になります。自己解説と社会評論と結末とエピローグを兼ねたような、不思議なパート。過剰なまでに現実を取り入れるからこそ、そうした現実にリンクできる人たちの共感を呼ぶのだろうな、と思いました。

 1990年の春、寂れた地方都市の片隅で鬱屈した日々を送る少女、永田香名子。そんな彼女が出会ったのは、ハヤタと名乗る犬耳の家政夫だった。奇妙な同居生活のなかで二人は否応なく魅かれあっていくが、彼と右手に融合している〈銃〉の罪を贖う〈情緒回復計画〉が達成された時、ハヤタは残酷な刑へ処せられる運命にあった――。異星の罪人とともに、1990年から2012年までの荒涼たる世界を生きた、ひとりの女性の物語。(カバー裏あらすじより)

  [楽天] 


防犯カメラ