『S-Fマガジン700 国内篇』大森望編(ハヤカワSF文庫)★★☆☆☆

 書籍初収録を多数収録。

「緑の果て」手塚治虫(1963)★★★☆☆
 ――最終戦争によって全滅した地球から、からくも逃げのびたわれわれは、密雲の下にある草ばかりの星に着陸した。

 なぜ擬態するのか――?という謎に対する解答が、極めて合理的で、単なる「奇想」ではなく「SF」になっていました。日本のSF作家第一号、だそうです。
 

「虎は暗闇より」平井和正(1966)★★☆☆☆
 ――おれほど目撃運の悪い人間はいないんじゃないか。三十年も生きているのに、三輪車の衝突事故現場に行きあわせたことすらなかったが――。ぼくは地上を見降ろしていた。車が炎を噴いて燃え上がった。ぼくは興奮を感じていた。

 事故を目撃したいという欲望を過度に持っている時点で異常なわけで、そんな異常者を語り手にしてしまったがために、誰もが心の奥に持っている――というテーマが霞んでしまっています。
 

インサイド・SFワールド この愛すべきSF作家たち(下)」伊藤典夫(1971)★★☆☆☆
 ――一昨年秋、イギリスSF界に新しい専門誌が生まれた。どちらに軍配があがるだろうと成行を見守っていたら、丸一年たって両誌ともほとんどいっしょにつぶれてしまった。

 SFマガジン700号に再掲されたものの後編。特集を読んだときにも感じたのですが、置いてけぼり感しか感じません。作品はもちろん作家や雑誌やファン活動までをも含めたSFというジャンル全体を愛している人じゃないと無理かも。
 

セクサロイド in THE DINASAUR ZONE」松本零士(1972)★★☆☆☆
 ――どうしてあいつだけがDゾーンへ転位できるのか? それが麻耶と愛人の疑問だった。その「あいつ」は夢のなかで恐竜に襲われた美女を助け……。

 タイムトラベルもののよくあるパターンに無理矢理セクサロイドを絡めたような作品でした。
 

「上下左右」筒井康隆(1977)★★★★☆
 ――テレビ(3ch)午後五時二十五分頃、UFOと思われる発行飛行物体が……/「ご主人はもう一台あとのバスで帰ってくるって言っていただろう……」/「何よ。たいした稼ぎもないくせに、偉そうな顔して……」/「×□△○÷◎+?」……

 見開きをアパートの断面図に見立てて、各階各部屋ごとにストーリーを綴った実験小説ですが、内容もフツーに面白いのはさすがです。しばらく考えてから、ページの横端にあるのはベランダの手すりだと気づきました。
 

「カラッポがいっぱいの世界」鈴木いづみ(1982)★☆☆☆☆
 ――「クラッシック界に、グルーピーが進出してきたんだって」「チェロだのバイオリンだので、ジワーッとくるわけ?」「ニュートラじゃないね、そーゆー女は」「じゃない。で、ハマトラユーミンを誤解して。あれ、かなりアナーキーなひとだと思うんだけど」

 この作品を2016年に読まされることに何の意味が……?
 

「夜の記憶」貴志祐介(1987)★★★★☆
 ――a-1 強い違和感の中で彼は目覚めた。彼は腹腔の中で内臓をぐるりと取り巻いている嚢を膨らませて、海底から浮き上がっていった。……b-1 「どうして泳がないの。気持がいいわよ」オリメに声をかけられて、彼は飛び上がりそうになった。「こんな素晴らしい景色も、もう見納めね」「まだ機会はあるかもしれない」「ええ。私たちにはね。でも私たちの思い出には……」

 SFマガジン2009年4月号()で既読。
 

「幽かな効能、機能・効果・検出」神林長平(1995)★★★★☆
 ――それがなにかの役に立つ機械なのか、ただの芸術作品なのか、おれたちにはわからなかった。だいたい、本当に過去の異星人の残したものなのか、おれたちはコンピュータで解析をつづけた。その間に、パイロン星人について面白い論文が見つかった。彼らは無意識に行動することができない生き物だったという――。

 ジェイク&コーパス・シリーズの第一作。人間には無意味な効能のアイデアが面白い作品ですが、同時に、検出不可能性という問題に触れられた思惟的な作品でもありました。
 

「時間旅行はあなたの健康を損なうおそれがあります」吾妻ひでお(1998)★☆☆☆☆
 ――今回はSFマガジンとの出会いと云うテーマで、吾妻さんには当時に遡っていただきます。

 SFマガジン500号記念に寄稿された、まさしく記念というだけの漫画にほかなりません。ファンには嬉しいのだろうけど。
 

素数の呼び声」野尻抱介(2002)

「海原の用心棒」秋山瑞人(2003,2004)

 二人とも好きじゃない作家なのでパス。
 

「さいたまチェーンソー少女」桜坂洋(2004)★★★★☆
 ――タクミくんが好き。でも、タクミくんはあの女を選んだのだった。涙を拭いて、わたしは、物置の奥で眠るチェーンソーを引っ張りだした。いまは亡き祖父がくれた誕生日プレゼントだった。

 荒唐無稽でシュールな光景に、妙にリアルな行動や戦闘が添える説得力。無論シュールな光景には理由があったことが明らかにされるわけですが。チェーンソーによるこれほどテクニカルで華麗な戦闘シーンがいままで書かれなかったのは、そもそもチェーンソーは武器ではないからだ――とするならば、もったいない話です。そして、それを書けるのがSFなのでしょう。
 

「Four Seasons 3.25」円城塔(2012)★★★★★
 ――Spring おれは時を逆行しようと決める。どうやって、と訊くような奴には無理な荒業だから、おれは自分の賢さに頭が呆っとなっている。この街は全ての願いを実現した最初の地方自治体だ。ただし民意の限りにおいて。

 SFマガジン2012年4月号()で既読。

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