「背に負わば月影の重き」『アフタヌーン』2018.9、『惑星クローゼット』2、『天国大魔境』1

アフタヌーン』2018年9月号(講談社

「天国大魔境」8「竹早桐子」石黒正数
 第1巻のちょうど続き。キルコの過去篇です。
 

「概念ドロボウ」3「ドウデモイイシ」田中一行

ヴィンランド・サガ」152「バルト海戦役28」幸村誠

おおきく振りかぶって」145「4市大会16」ひぐちアサ

「フラジャイル」51「ガイドライン草水敏/恵三朗
 ――「万が一何かがあった時は、あんたは何も知らなかったと言うんだ」泌尿器科の大月先生から病理診断の依頼を受けた宮崎。

 とても横暴……に見えた依頼でしたが、倫理と人命の瀬戸際を知っている臨床医だからこその意思がそこにはありました。
 

「背に負わば月影の重き」久保田かど
 ――「就活すんな。俺が絶対に食わしてやるから」これはプロポーズなんかじゃない。送り主は僕の相方だ。大学のお笑い研究会に所属している大貫は、安部に誘われてコンビを組んでいた。天才型の安部に対して凡人を自覚している大貫は就職説明会に参加したいが、安部を裏切るようでなかなか言い出せずにいた。

 四季賞2018年夏のコンテスト四季大賞受賞作。「物語をプロデュースする力は、もうプロですね」という幸村氏のコメントどおり、新人賞ということを忘れてぐいぐいと読み進めていました。就職か夢か――という当事者以外にはつまらなくなりそうなテーマなのに、終盤で安部が大貫に言うとおり、大貫には「観客の味方感」があるのでしょう。芸人気取りの角川批判も斜に構えるのではなく「あるある」に変えることで不快感を感じさせません。何よりも、作中のネタがきっちり笑えるのが実はすごいことだと思いました。
 

「バギーウィップ」最終話「挑戦」大野すぐる
 大物との試合が始まったと思ったらいきなり最終回です。王道スポーツもので人気が出そうなタイプの作品だと思っていたのですが、『アフタヌーン』に王道スポーツ漫画はいらないということなのでしょうか。またひとつ面白い連載が終わってしまいました。
 

「ダレカノセカイ」10「バケモノノキモチ」三都慎司
 ――ユカリがたどり着いたのは、大量のモニターと書籍が並ぶ部屋だった。クリエイターたちを知るらしきその老人は「サカキ」と名乗った。人類の栄光の時代を残し続ける手段としてオルビスという世界を一番処理能力の高い少年少女が再構成しているのだという。そして鍵を握るのは……。

 説明する文章が極端に少ないこの漫画で、珍しくサカキが長台詞で説明してくれたので、少しずつこの世界や事情が明らかになってきました。そして意外な人物が鍵を握っていました。泣きながら街を破壊するユカリの姿に『AKIRA』の連想してしまいました。
 

『惑星クローゼット』(2)つばな(幻冬舎BIRZコミックス)
 ――先輩に開いた出入口を通って連れ去られた妹を取り返そうとフレア。ヘビに完全に乗っ取られる前に意識を身体に戻そうとする田村。惑星と地球を行き来しながら、愛美たちはヘビと戦い続ける。

 一時期休載していたので心配していましたが、ついに2巻が発売されました。表紙のイラストは色が黄色いので絵の具をかぶっているように見えますが、おそらく体液なのでしょう。『七女』時代からキモイとカワイイの境界でがんばってるようです。
 

『天国大魔境』(1)石黒正数講談社アフタヌーンKC)
 おまけページはありません。連載時のカラーページがそのまま印刷されているのではなく白黒仕様になっています。連載第一回のキルコの台詞、ギャグだと思っていたのですが、きっちり1巻の最後で回収されているところに、石黒正数っぽさを感じます。
 

    


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