『NO.6』(#1~#9)あさのあつこ(講談社文庫)★★★☆☆

 不幸も悲しみもない理想都市「NO.6」。紫苑はエリートとして『クロノス』で育てられていた。だが12歳の誕生日、警報装置を切って窓を開けていた紫苑の部屋に、ネズミと名乗る少年が忍び込んだ。護送中に逃亡したネズミの銃創を手当てし、逃がしてやったことで、紫苑はエリートの資格を剥奪された。四年後、公園管理事務所で働く紫苑は、急激な老化に見舞われた死体を発見する。次いで紫苑は、犠牲者の首から蜂が飛び出したのを目撃する。連続して現場に居合わせた紫苑は、容疑者として治安局員に強制連行されてしまう。幼なじみの沙布に別れを告げ、護送されているさなかの紫苑を助けたのは、ネズミだった。紫苑はネズミに連れられて、NO.6の周縁に位置する西ブロックに逃げ込んだ。自らも蜂に寄生され、真っ白な髪になった紫苑は、西ブロックを支配する食うか食われるかの現実を目の当たりにする……。

 考えることも悩むことも否定された管理社会に疑問を持ちつつ、さらにはそんな社会に裏切られることになり、貧困層の現実を見ても、それでもお人好しなままの紫苑は、掛け値なしのおぼっちゃまで、読んでいるほうも危うくイライラしかけるのですが、ネズミのほうが先にイライラしてツッコミを入れてくれるので、そんな二人を温かい目で見守ってゆけるという、バランスのよい会話のやり取りがいいコンビでした。

 しかし……お別れのキスって、ナンデスカ……? どーしてそこで腐になるの? わけわかりません。

 第6巻では「森の民」なんてエコロジ臭のする胡散臭い人たちまで出てきて、急速につまらなくなってゆきます。

 アクションはいいんですよね。ネズミによるナイフ遣いや徒手空拳、矯正施設への侵入は言うに及ばず、犬を統べるイヌカシや溝鼠を操るサソリなど、忍法帖やらひげよさらばやらを思い出させる襲撃は、近未来とは思えないレトロな魅力に満ちています。

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