『紳士同盟』小林信彦(新潮文庫)★★★☆☆

 携帯電話もインターネットもない時代。

 著者得意のテレビ・映画業界を舞台にした、詐欺《コン・ゲーム》小説です。

 本書には四つの詐欺が描かれています。小手調べ代わりの、銀行の手続きを利用したもの。今で言ういわゆる〈素人〉のテレビ願望と、女優へのファン心理を利用した二つ目と三つ目。映画の夢を諦めきれない映画ファンから出資金を騙し取る四つ目。

 一つ目を除けば、「ゲームにひっかかり易い人間」を見つけた時点で結末は決まったようなもので、詐欺の内実は、知的な遊戯というよりは大がかりな〈ごっこ遊び〉ですね。

 ひっかかり易い人間をどうひっかけ続けるか、というのが勘所で、葬式を利用して災い転じて福と成したはったりが、いちばんの見どころでした。そのほか、詐欺師に似た銅像を用意したりといった、細かい手続きによって説得力を高めるやり方に、プロっぽさを感じました。

 思わぬ運命の急変から、大金が至急必要になった四人の男女。彼らはにわかチームを結成し、伝説の老詐欺師を指南役に、知恵の限りを尽してあの手この手のコン・ゲーム(詐欺)を仕掛けてゆく。その目標額は――2億円! 人間心理の隙をつき、相手に気取られることなく騙しきる華麗なテクニックの妙味。洒脱でユーモアあふれる筆致。薬師丸ひろ子主演で映画化もされ、大ヒットを記録した、国産コン・ゲーム小説の嚆矢にして代表作が、装いも新たに登場。(カバーあらすじ)

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