『カナリヤは眠れない』近藤史恵(詳伝社文庫)★★★☆☆

 カード依存症になった茜は、親の助けで借金を完済したあと、二度とカードは使わないと誓ったはずだった。だが玉の輿に乗り、夫からクレジットカードを手渡された茜は、魅入られたように洋服を購入していた。

 週刊誌記者の雄大は、寝違えた首を治しに接骨院に連れられてゆく。ぶっきらぼうだが腕の良い合田力から、生活を見直すように忠告された雄大は、助手の歩・恵姉妹に魅かれたこともあって、接骨院がよいを始める。

 身の丈に合わない買い物というテーマの取材を命じられた雄大は、同僚のつてでセレクトショップの取材に向かう。そこは茜の同窓生が経営しているショップだった。

 探偵役を務める整体師・合田力は、身体の悪いところを一目(一診)で見抜いてしまう力量の持ち主ですが、それは理屈ではなく直感によるところが大きく、事件自体も推理云々ではなく飽くまで直感的なものです。

 しかしながら、カード依存歴のある主婦がふたたび堕ちてゆく過程を描いた悲劇のように見えて、裏ではがっつり仕掛けが施されていたりもするミステリでもありました。引け目を持っている人間は、突け込まれると弱いものなのでしょう。

 合田力は、トンネル工事で有毒ガスの有無を確認するためにカナリヤを連れて行くというエピソードにちなんで、心に問題を抱えている人を呼吸困難で苦しんでいるカナリヤになぞらえ、助けようとする心の医師でもあります。そうした人間だからこそ、気づいてあげられたのでしょう。

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