『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』6 泰三子(講談社モーニングKC)
「大豊作の年」の元陸上選手の松島と県警一の美女の桃木分隊長がようやくきちんと描かれました。あと一人はまだ不明のまま。この巻では牧高もさらに掘り下げられ、有り得ないほどの運動音痴ぶりが2回にわたって描かれています。
そして川合の似顔絵がまた登場しました。3巻のときもそうでしたが、川合は破壊的な絵心の反面、ときどき驚くほど鋭いものの見方をします。川合の似顔絵を見て「こんなイケメンじゃない」と話す目撃者の言葉から、犯人を悪く言いたい男心を読み取ったことが、事件の解決に一役買っていました。川合の気づきに源部長の経験と観察眼が加わることで、目撃者の感情によって修正される前の純粋な似顔絵が残されることになりました。
川合は第45話「セーグのミカタ」や第49話「現場のプリキュア」でも、これまでのポンコツぶりとはまた違った顔を見せています。
一方で――というべきでしょうか、ギャグ漫画の命たる笑いにはますます磨きがかかっていました。藤部長のブス顔だったり、相変わらずドジが抜けない副署長だったり、「捜索差し押さえ」と「優しさ」やオセロの譬えなどツッコミも冴え渡っていました。なかでも一番笑ったのは、タイトルからも自信がうかがえる第50話「笑ってはいけないお誕生日会」です。
指紋を採取したその後のことや、交通事故加害者に対する宮原部長の熱い言葉など、現場に身を置いているからこその説得力もありました。
『淡島百景』3 志村貴子(太田出版)
初版には人物相関図ペーパー入り。
第14~16話「大久保あさみ」は、第1話で他人の入ったあとのお風呂には入れないと泣き出したあの子の話です。ただの世間知らずお嬢様なのかと思っていましたが、地味に壮絶な家庭環境でした。ちょっとしか登場しないのに、ルームメイトの大東先輩がとてもいい人で、悩んでいる大久保さんとは違ってからっとしていて、しかも一つ年上なだけとは思えないほどしっかりしています。この先輩の話ももっと見たいですね。
第17~19話「山県沙織と武内実花子」には第2巻第6話「四方木田かよと山県沙織」が再登場。基本的に過去と現在の淡島歌劇学校合宿所が舞台のこの作品のなかで、退団しなかった少女たちのその後のパートを担うエピソードです。いわば選ばれた者たちのエピソードですが、それでも順風満帆とはいきません。二人ではなく三人組だったんですね。沙織と実花子がライバル的関係で。
第20話「柏原明穂と田畑若菜」ではついに一年が経ち、先輩が卒業し新入生が入寮しました。若菜のルームメイトは俳優夫婦の娘です。少し悟ったような新入生に対し、ちょっと天然っぽい若菜はベストパートナーのようです。すでに卒業してしまった竹原絹枝が若菜の目を通して、やはり凜々しく描かれていました。
『インハンド』01 朱戸アオ(講談社イブニングKC)
ドラマ化にともない『ネメシスの杖』『インハンド 紐倉博士と真面目な右腕』も、『インハンド プロローグ』I・IIとして新装版が刊行されました。
第1巻の本書には、根絶されたはずの天然痘患者が大量発生する第1~5話「ペルセポネの痘」と、ドーピング疑惑の第6~7話(続きは次巻)「キマイラの血」が収録されています。
野生動物にワクチンを投与するためにウイルスを利用するという研究が実際にあるそうで、それを利用したバイオテロが描かれています。紐倉は明晰な頭脳はもちろんのこと風貌といいエキセントリックなところといい名探偵そのものです。僕だったらこうすると言って犯行方法を推測してゆくのを「お前最低だな」とツッコまれてはいますが、余計な感情に惑わされずに真実を直視する。
この事件をきっかけに紐倉はある種の責任感に目覚めたのか、寄生虫の専門家だというこだわりは捨てずに持ちつつも、バイオセキュリティに取り組むことにしたようです。
「ペルセポネの痘」の最後と「キマイラの血」には、『リウーを待ちながら』にも登場する潤月らしき人物が登場します。苗字が鮎澤から雪村に変わっているのは結局父親とは縁を切ったのでしょうか。
『天国大魔境』2 石黒正数(講談社アフタヌーンKC)
衝撃の告白の事情が明らかにされます。
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