『その可能性はすでに考えた』井上真偽(講談社ノベルス/講談社文庫)★★★☆☆

 とある事情により奇蹟があることを証明しようと、名探偵がトリックの可能性を否定する――ひねくれた設定のようですが、どうしてどうして、ワトソン役の迷推理を探偵役が否定する――と考えれば、ごく普通のミステリとさして変わりはありません。

 しかしながらこの設定の面白いのは、可能性を述べる側はどんな可能性であってもOK、というところです。普通であればただの荒唐無稽で無理矢理な内容の仮説でも、本書では「あり」なのですね。可能性を推理する人たちがまた、中国の裏社会の人間だったり天才少年だったりと、馬鹿馬鹿しくも賑やかなメンバー。しかも黒幕が、奇蹟を信じない枢機卿(^^; 何があなたをそこまで駆り立てる。。。

 馬鹿げたトリックとかエキセントリックなキャラクターとか、謎解きミステリのおバカな部分を、うま~くブラッシュアップしている設定だと思いました。

 ロジックに関しても、クライマックスに至って、個々の推理とそれに対する探偵の反証自体が攻撃手段にされます。論理自体が自己崩壊を起こすという、まさにロジックという語に尽きるストーリーです。

 もちろん謎解きミステリである以上、奇蹟でした――で終わるはずもなく、最後にひとつの謎解きは用意されています。「可能性」として。

 かつて、カルト宗教団体が首を斬り落とす集団自殺を行った。その十数年後、唯一の生き残りの少女は事件の謎を解くために、青髪の探偵・上苙丞《うえおろじょう》と相棒のフーリンのもとを訪れる。彼女の中に眠る、不可思議な記憶。それは、ともに暮らした少年が首を切り落とされながらも、少女の命を守るため、彼女を抱きかかえ運んだ、というものだった。首なし聖人の伝説を彷彿とさせる、その奇跡の正体とは……!? 探偵は、奇蹟がこの世に存在することを証明するため、すべてのトリックが不成立であることを立証する!! 謎はすべて解けました。これは――奇蹟です。(カバーあらすじ)

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