『ヤオチノ乱』2、熊倉献『生花甘いかしょっぱいか』「盤上兄弟」

『ヤオチノ乱』2 泉仁優一(講談社
 2巻はkindle版のみ。そりゃ宣伝もしていないのだから紙媒体が売れるわけもない。四季賞出身とはいえ四季賞準入選作「無常の霧音」は本誌には載らず、掲載は講談社漫画誌サイトの「モアイ」のみ。2巻の発売もたまたま著者twitterをチェックしていなければ知ることはありませんでした。

 2巻は八百蜘一族の選抜試験の続きです。1巻では2組のペアを撃破したキリネ&シンヤ組。2巻でも他の志願者をあぶり出すことに成功しますが、敵もここまで脱落せずに残っている実力者で、キリネをして「すごい(中略)ここまで細部を作って演じきるとは」と言わしめます。この志願者とキリネの攻防に、1巻からちらほら顔を出していた卑怯者顔の志願者コンビとシンヤのぼんくらぶりが加わって転がってゆくのですが、あっさりと決着がついたのは意外でした。3巻からはいよいよ本編(?)がスタートの模様。シンヤはどうなるのでしょうか。
 

『生花甘いかしょっぱいか』熊倉献
 『春と盆暗』の著者による新作。2018年8月からコミックDAYSで連載され、2019年5月8日で最終回を迎えました。連載していることに気づいたのは最近になってからでした。

 何と縦書き縦スクロール漫画です。場面によってはコマではなく縦に絵が繋がっているので、単行本化は難しそうです。紙媒体化はまず無理でしょうし、kindleでも難しそう。もし単行本化されたとしても、連載とは違うスタイルになりそうです。

 舞台は葬儀用の花屋、そこでアルバイトをする青年相田とバイトの先輩夏目さんが主人公です。内容は『春と盆暗』同様、ぼんやり男子によるちょっとだけ変わったお姉さんへの片想い未満が描かれます。だから一話完結だった『春と盆暗』とは違って、煮え切らない関係が続いてゆくことにます。なので一目惚れでもなく、相田が自分の気持に気づくのも2話目でした。その気づき方が面白く、微笑ましい場面の多い著者の作品ですが、この場面には大笑いしました。
 

「盤上兄弟」熊倉献
 著者のデビュー読み切り。コミックDAYSに再掲されていました。妻の年の離れた弟と、入り婿の旦那さんによる、著者独特の風変わりな“戦争”が描かれています。その風変わりさが天然ではなく意図的なところが、『春と盆暗』や『生花甘いかしょっぱいか』とは違うでしょうか。図案やイラストで表現された心象風景によって登場人物が自分の感情を自覚するという作風は、すでに確立されていました。
 

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