『最後のトリック』深水黎一郎(河出文庫)★★★☆☆

 メフィスト賞受賞作『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』改題文庫化。

 冒頭から明らかになるように、「読者が犯人」に挑んだ作品です。常識的に考えてそんな作品など不可能なわけですから、本書もある特定の条件があって初めて成立するものです。だからこの「最後のトリック」に何の不満もないと言ったら嘘になりますし、これから読むかたも期待はしないほうがよいでしょう。

 ただし黄金時代に書かれたアイデアのみの企画ものとは違い、伏線や構成も凝っており、何よりも「読者が犯人というアイデアを買ってくれ」という真意は何であるのかといった謎で引っ張ってゆく、読んでいて面白いものになっていました。作中作という構成がトリックにとって必須のものであるのが好印象でした。

 【※真相】ラブレターを晒された忌まわしい過去によって、自分の文章を他人に読まれていると感じたら対人恐怖症の発作を起こすようになったESP能力者が、保険金目的で読者に殺してもらおうと企み、作家である友人に自分の文章を新聞連載推理小説として発表してもらおうと考えた。その連載小説こそがこの『最後のトリック』という小説であった。超能力など証明できないので、自殺でも殺人でもなく心臓発作の自然死と診断されることになる。【/真相※】

 メフィスト賞受賞作なのに、なぜか文庫落ち河出文庫です。秦建日子と同じ際物枠扱いされたのかな?と勘繰ってしまいましたが、「人間の尊厳と八〇〇メートル」は本格ものとして評価されてますし、はてなぜなのでしょう。

 「読者が犯人」というミステリー界最後の不可能トリックのアイディアを、二億円で買ってほしい――スランプ中の作家のもとに、香坂誠一なる人物から届いた謎の手紙。不信感を拭えない作家に男は、これは「命と引き換えにしても惜しくない」ほどのものなのだと切々と訴えるのだが……ラストに驚愕必至! この本を閉じたとき、読者のあなたは必ず「犯人は自分だ」と思うはず!?(カバーあらすじ)

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