『その女アレックス』ピエール・ルメートル/橘明美訳(文春文庫)★★★★☆

 『Alex』Pierre Lemaitre,2011年。

 道を歩いていた女が白いバンに連れ込まれ誘拐監禁されたが、犯人の素性も被害者の身許も不明――。妻を誘拐殺害された経験を持つ警部カミーユが、あろうことか誘拐事件の指揮を執ることになってしまいます。監禁されたアレックス、捜査を続ける警察、交代する二つの視点によってストーリーは進んでゆき、ついに手がかりを見つけたかと思われたものの、予審判事の失態により手がかりは潰えてしまいました。警察は単独で被害者にたどりつけるのか――。

 ここまでなら面白くはあるもののよくある誘拐サスペンスだと言っていいでしょう。

 この作品の個性はここからでした。

 単なる誘拐事件に思われたものは、別の連続殺人事件へと手繰られてゆくのです。いったいアレックスはなぜ誘拐されたのか、連続殺人の動機は何なのか……第二部ではこの連続殺人の犯人追跡がメインとなります。

 そして第三部。物語は一応の決着がつけられたかに見えましたが……某サスペンスの名作を髣髴とさせる、状況証拠の積み重ねによる逮捕は鮮烈でした。事件のすべてはこのためにあったのですね。

 個性豊かな捜査陣たちも霞んでしまうほどに、アレックスという女性が魅力的でした。

 本書はカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの第二作目とのこと。

 おまえが死ぬのを見たい――男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが……しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。(カバーあらすじ)
 

  ・ [楽天] 


防犯カメラ