『図書館の魔女』3・4 高田大介(講談社文庫)★★★★★

 禁書についての議論、戦争回避のための外交戦略、狙われるマツリカ、外交本番……いよいよ興に乗って第三巻は留まるところを知りません。

 禁書についてのくだりでは知的好奇心を刺激され、この世界を形作る壮大な絵図を改めて実感しました。マツリカを狙う刺客の手口はいかにもこの世界らしいものであるうえに、無骨な暗殺などではなく絵的にも見応えのあるものでした。外交本番では、キリンが大活躍するほか、扁額をめぐるマツリカの鮮やかな推理と、明らかになる国家の秘密、そしてキリヒトが図書館に招かれた時点まで遡ってすべてが一つにまとまろうとしています。

 そしていよいよ第四巻。てっきり第三巻で明らかになった国家の秘密と行方不明者のことが中心になるかと思っていたのですが、見せ場を作っていたのはまたもやキリンでした。第三巻はいわば序盤戦。アルデシュの代表団を相手に、熱弁をふるう姿には、ほれぼれとしてしまいます。第一巻の探検で発見していた謎の装置も、ようやくその全貌が明らかになりました。ピンチを有利な交渉の材料に変えてしまうマツリカの機知には相変わらず舌を巻きます。

 そして第四巻後半。ここからは、ある意味で長いまとめでした。マツリカの左腕を元に戻すため傀儡師の許を目指す一同。そこに待ち受けていたのは、ニザマ宦官たちの送り出した想像を絶する悪夢のような刺客でした。何だかわからないものとの気の遠くなるような死闘に手に汗握らされるだけでなく、ここにきて小さな伏線がちょこちょこ活きてくることに読んでいてわくわくしていました。

 そうしてすべて終わったかに見えたあとにも、まだまだドラマが待ち受けていました。信頼、人との関わり、別れ。

 言葉に彩られた物語に相応しく、最後には二つの名前で幕を閉じます。すべての登場人物たちの、この後の物語を読む日が待ち遠しいです。

 深刻な麦の不作に苦しむアルデシュは、背後に接する大国ニザマに嗾けられ、今まさに一ノ谷に戦端を開こうとしていた。高い塔のマツリカは、アルデシュの穀倉を回復する奇策を見出し、戦争を回避せんとする。しかし、敵は彼女の“言葉”を封じるため、利き腕の左手を狙う。キリヒトはマツリカの“言葉”を守れるのか?(第3巻カバーあらすじ)
 

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