『図書館の魔女』1・2 高田大介(講談社文庫)★★★★☆

 鍛冶屋の少年キリヒトのところに、王城からの使いが現れ、「図書館の魔女」マツリカの許に仕えるようになる……これだけ聞けば、何も知らない無垢な少年が、広い世界を知り人と出会いかけがえのない経験をする、サクセスストーリーであり成長物語である――ように見えます。

 そして少なくとも第一巻(第一部)の段階ではそれは間違いではありませんでした。

 口のきけない少女、図書や言葉についての議論、老獪な政治家たち。鍛冶の里から来た少年の存在はまるで場違いなようにも思えますし、実際、図書館付きになった少年が文字を知らないと知り、魔女も司書たちも唖然としていました。

 そんな少年が、手話や指話を通して魔女と交流し、失われた地下水道を調べておしのびで「探検」に繰り出す……絵に描いたような貴賤の交流譚であり少年少女の成長譚ですね。

 そんな様子に変化が見えたのが、第二巻(第二部)の中盤ほどでした。いつものように町に繰り出していた二人は、二人組の御者のおかしな言葉を耳にします。

 そこから先は一気呵成。そうして第二巻終章、キリヒトはマツリカのお願いにより大事なものを手放すことになりますが……。

 二人にどのような運命が待ち受けているのか、周辺諸国との緊迫関係はどうなってゆくのか、第三巻・第四巻に期待です。

 章のタイトルはわずかの例外を除いて、章の冒頭の文章がそのままタイトルになっていました。

 メフィスト賞受賞作。

 鍛冶の里に生まれ育った少年キリヒトは、王宮の命により、史上最古の図書館に暮らす「高い塔の魔女《ソルシエール》」マツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声を持たないうら若き少女だった。超弩級異世界ファンタジー全四巻、ここに始まる!(第一巻カバーあらすじ)
 

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