『涙香迷宮』竹本健治(講談社文庫)★★☆☆☆

 囲碁シリーズの最新作?。作中時間がどうなっているのかわかりません。サザエさん方式と一緒で、登場人物は歳を取らないのに時代だけが進んでいるという設定でしょうか。智久君は18歳なのにスマホが存在してるし、登場人物の会話のノリは若作りしたおっさんだし。

 本書では二件の殺人事件が起こります。碁盤に突っ伏して死んでいた老人の事件と、〈涙香の別荘〉で智久たちが巻き込まれる事件なのですが、二つの事件にあまり関連はありません。第一の事件の犯人が勝手に危機感を覚えて第二の事件を起こすだけなので、犯人が冷静であれば第二の事件は起こらなかったでしょう。涙香が旧形式の五目並べいろは歌のどちらにも並々ならぬ力を注いでいたことから、五目並べいろは歌のどちらも描きたかった作者のこじつけです。

 作者が描きたかったその涙香の功績すら、だらだらと棒読み台詞で解説しているという最悪の描かれ方でした。

 作者が考えた四十八首のいろは歌とその暗号は見事で、これだけなら★★★★★なのですが、裏を返せばそれだけしかない作品でした。

 囲碁界では有名な老舗旅館で発生した怪死事件。IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久は謎を追いかけるうちに明治の傑物・黒岩涙香が愛し、朽ち果て廃墟になった茨城県の山荘に辿りつく。そこに残された最高難度の暗号=日本語の技巧と遊戯性をとことん極めた「いろは歌」48首は天才から天才への挑戦状だった。(カバーあらすじ)

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