『鉄塔 武蔵野線』銀林みのる(新潮文庫)★★★★☆

鉄塔 武蔵野線』銀林みのる(新潮文庫

 第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

 何だかわからないけどすごい。のっけからまったく付いていけません(^^;

 鉄塔の説明が事細かに怒濤のごとく書かれてありますが、まったくわかりません。。。

 女性型鉄塔と男性型鉄塔というのがまずわかりません。写真付きで説明されても碍子とは何なのかもわからないので、違いについてすらしばらくはピンと来ませんでした。アキラという年少の少年が登場し、語り手がアキラに説明する場面になって、ようやく違いについてはわかりました。

 けれど違っているからといってどうなんだと思うばかりで、この少年なりの違いについてのこだわりについては、やはりまったく理解できないままです。子ども特有の自分だけの世界が、オタクのような無敵の執拗さで書かれているので、共感の入り込む余地がありません。

 けれど、鉄塔の番号1番の場所には何があるのか――というささやかな冒険行は魅力的で、主人公には相変わらずまったく共感できないのに、旅の続きは応援したくなってくるから不思議です。

 主人公が自分の力ではゴールにたどり着けないというのは冒険ものとしては異色な気もしますが、自力到達であればゴールには着けても施設内には入れなかったでしょうから、招待という過程が必要だったのでしょう。

 応募原稿に鉄塔の写真が貼り付けられていたというエピソードから、狂気じみたものを想像していたのですが、実際には写真がないとちんぷんかんぷんなので、写真貼付は必要なことだったようです。とは言え最後に全鉄塔の写真がグラビアみたいに並べられているのには笑ってしまいましたが。

 夏休みも半ばを過ぎたある日のこと。5年生の見晴は近所の鉄塔で番号札を見つける。その名は〈武蔵野線75‐1〉。新発見に胸を躍らせた見晴は、2歳下のアキラを誘い、武蔵野線を遡る。「オレたちは鉄塔を辿っていけば、絶対に秘密の原子力発電所まで行けるんだ」――未知の世界を探検する子供心のときめきを見事に描き出した新・冒険小説。第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。(カバーあらすじ)

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