『愚者のエンドロール』米澤穂信(角川文庫)★★★★☆

 『Why didn't she ask EBA?』2002年。

 古典部シリーズ第二作。

 二年F組が文化祭の演し物で作ることになったミステリー映画は、脚本家の本郷真由が急病になってしまい結末が不明のまま。そこで白羽の矢を立てられたのが、映画プロジェクトの代表者・入須冬美の知り合いである千反田と、推理力を買われた奉太郎たちのいる古典部でした。解決できなかった場合の責任を負いたくないという奉太郎に対し入須が提案したのは、探偵役ではなく、F組クラスメイトの推理をジャッジする役でした。一つ一つの推理を検証してゆくなかで、自分の役割を自覚した奉太郎は、ついに探偵役を引き受けることにしました……。

 未完成のミステリー映画の続きを推理する――という作中作の形式を取ることで、日常の謎のシリーズで実質的に殺人事件が扱われているというのは、ちょっと安易だなあ……と思っていたところ、むしろそれを逆手に取ったような、作中作という形に意味があるというか、作中作の外側に正解があるような真相でした。奉太郎の第一の推理はある意味いいところを突いていたんですね。映画には撮影者がいるように、実際の事件と違って作中作には作者がいるということに、気づけませんでした。

 ミステリ読者であればあるほど、事件の解決に夢中になってそれ以外が盲点になってしまうと思います。

 古典部シリーズは「熱狂とそれに押しつぶされた人」がテーマだそうで、本書のなかでは脚本家と、それに奉太郎自身も間接的に被害をこうむっています。ようやく自分の才能を自覚しながら、その直後に苦さを味わわせられることになるのですが、『氷菓』では他人に起こったことを、身を以て経験している【※他者に利用される】ことからも、本書は『氷菓』の正統的な続篇であり、変奏曲でもあるのでしょう。

 英題はクリスティ、趣向はバークリー、作中にはホームズと、古典部の作品に相応しく(?)古典づくしです。多重解決ものは真相よりも途中の推理の方が面白かったり、どうせ最後の解決以外ははずれなのだろうから退屈だったりする欠点があるのですが、事件自体がシンプルなのと、未完成の作中作(しかもミステリ素人の作)なのでそもそも真相がちゃんとあるのかどうかもわからない危うさのおかげで、解釈に幅が生まれて最後まで楽しむことができました。

 「わたし、気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか? その方法は? だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した! さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作!!(カバーあらすじ)

  


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