『魔法使いとリリス』シャロン・シン/中野善夫訳(ハヤカワ文庫FT)
『The Shape-Changer's Wife』Sharon Shinn,1995年。
プラチナ・ファンタジイの一冊――といっても、帯に〈プラチナ・ファンタジイ〉と書かれているだけで、何がどうプラチナなのかはよくわかりません。ラインナップにはケリー・リンクやクリストファー・プリースト作品が並んでいます。
本書はいかにもファンタジーという感じの甘々ファンタジーでした。
変身術師グライレンドンに弟子入りした若者オーブリイが、ちょっと変わった術師の妻リリスに惹かれてゆくが、リリスは実は……という内容。
物語は平板で、リリスにもオーブリイにも魅力がないため、読み進める吸引力がありません。
変身の技では世界一と評判の、魔法使いグライレンドンに弟子入りすることにした青年オーブリイ。村外れにある館を訪ねると、魔法使いの妻リリスが彼を出迎えた。態度の冷たい、緑の瞳のどこか魅惑的な女性――弟子として館に住むうちに、オーブリイはそんなリリスのことを想うようになるが、彼女は“愛”という感情が理解できないと言う。なぜならリリスの正体は…。新鋭が贈る、愛と魔法に満ちた哀切なるファンタジイ(カバーあらすじ)