『Anne of Green Gables』Lucy Maud Montgomery,1908年。
1993年に集英社から刊行された訳註&完訳シリーズが、改稿のうえ第4作以降も発売されることになりました。本書のその第1作です。
アンのクレバーな感じが好きなのですが、一般的には明るくて前向きな女の子というのがイメージでしょうか。読み返してみると本当に休みなくしゃべっていて、これまで経験したことのなかった素晴らしい世界にテンションが上がっているところを読むと、本当に微笑ましくなります。
リンド夫人に「上手に謝る」場面を嫌味なく演じてみせられるのが才能ですね。
饒舌なアンに対するマリラのツッコミも冴えていて、いいコンビです。そのマリラですが、ブローチといいラズベリー水といい実は結構おっちょこちょいなところもある人でした。
読み返してみて意外だったのは、ダイアナとの友情よりもむしろマリラとの愛情を感じさせる場面の方が多かったことです。どうも記憶のなかで「腹心の友」という言葉のイメージだけが一人歩きしていたようです。
卒業を機にぐんと大人になってゆくアンですが、ダイアナとの明かりの合図という子どもっぽいエピソードを挟むことで、相対的に大人っぽさを引き立たせていました。
この新訳シリーズの目玉は何といっても文学作品をはじめとする訳註で、赤毛のイメージや登場人物のルーツや、第14章の「目に見えない風」に関する濡れ衣と解放など、作品理解の助けとなるようになっています。
マシューの口癖や「腹心の友」などの訳語はもっとも馴染みのある村岡花子訳を踏襲していました。
帯に「児童書でも、少女小説でもない 大人の文学」という言葉を入れているわりには、カバーが乙女チックなのだけはどうにかならなかったのでしょうか。
孤児アンはプリンス・エドワード島のグリーン・ゲイブルズでマシューとマリラに愛され、すこやかに育つ。笑いと涙の名作は英文学が引用される芸術的な文学だった。お茶会のラズベリー水とカシス酒、スコットランド系アンの民族衣裳も原書通りに翻訳。みずみずしく夢のある日本初の全文訳・訳註付『赤毛のアン』シリーズ第1巻。(カバーあらすじ)
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