『陽気なギャングは三つ数えろ』伊坂幸太郎(祥伝社文庫)★★★★☆

『陽気なギャングは三つ数えろ伊坂幸太郎祥伝社文庫

 『A cheerful gang Count three.』2015年。

 陽気なギャングシリーズの第三作です。

 シリーズを読むのは始めてですがまったく問題はありませんでした。それぞれ得意な能力を持つ四人のアウトローというコテコテの設定には、水戸黄門やヒーローもののような頼もしさがありますね。どんな嘘でも見抜けるリーダー格の成瀬、口から出任せで煙に巻く響野、動物好きの掏摸・久遠、正確な体内時計とドライビングテクニックを持つ雪子。

 傍若無人なホテル客から久遠が掏ってしまった財布を返しに行ったのが、不運の始まりでした。そのホテル客であるゴシップ記者・火尻から銀行強盗の疑いをかけられ、四人は金目当てにつきまとわれるようになります。

 火尻の部屋から出て来た目出し帽の男が何者かを探るうち、ホテルで企まれていたある計画が浮かび上がってきます。

 ここが一つ目の山場でした。ホテル内のちょっとしたトラブルに思えた出来事が一つにまとまり、火尻VS陽気なギャングという図式にまったく別の図が重なってくるのには興奮しました。

 ここからは『スティング』さながら、火尻を罠に掛けるため読者をも騙す遠大な計画がスタートします。さまざまな伏線が張りめぐらされ、どこから成瀬の計画が始まっていたのか、読み返したくなりますね。

 ギャグシーンだと思われた久遠の似顔絵技術が計画に必須だったり、雪子の居所がばれるきっかけに過ぎないと思われていたエピソードが最後に回収されたり、何気ないシーンほど印象に残りました。

 陽気なギャング一味の天才スリ久遠は、ひょんなことからハイエナ記者火尻を暴漢から救うが、その正体に気づかれてしまう。直後から、ギャングたちの身辺で、当たり屋、痴漢冤罪などのトラブルが頻発。蛇蝎のごとき強敵の不気味な連続攻撃で、人間嘘発見器成瀬ら面々は追いつめられた! 必死に火尻の急所を探る四人組だが、やがて絶対絶命のカウントダウンが!(カバーあらすじ)

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