『日時計』クリストファー・ランドン/丸谷才一訳(創元推理文庫)★★★☆☆

日時計』クリストファー・ランドン/丸谷才一訳(創元推理文庫

 『The Shadow of Time』Christopher Landon,1957年。

 誘拐犯から送られてきた被害者の写真に写っている影から居所を突き止めるというあらすじだけは知っていたのですが、実際に読んでみると、それだけが残された最後の手がかり!という感じではなく、主人公の探偵のところに被害者の父親が依頼してきた時点でいきなり写真から場所の特定をしようとしていて、いきなりのクライマックスに驚きました。

 しかも自分には専門知識がないからと場所の特定は他人に丸投げ。分析の様子も描かれないまま放り投げられてしまいます。

 では主人公はどうしたかというと、写真が送られてきた郵便ポストを張り込んで投函の瞬間をカメラに収めようという、アホみたいな作戦を決行します。そしてまんまと見つかってしまうアホな犯人。

 意気揚々と写真から場所を突き止めた友人でしたが、主人公はもっと単純な方法ですでに犯人も身許まで突き止めておりました。。。

 ここまででまだ半分も進んでいません。長篇作品ではなく中篇2作が収録されていたのだったかと、思わず目次ページを確認してしまいました。いや、もう終わっちゃうのでは……。

 そこはそれ、突き止めたといっても隠れ家まで突き止めたわけではなく、犯人だという証拠もないので、主人公夫妻と友人は被害者を助けに直接敵地に乗り込む冒険小説になっていました。

 原題も『The Shadow of Time』というくらいですから、著者も写真の手がかりには自信を持っていたのかもしれませんが、正直なところタイトルやあらすじでアピールするほど作品の肝になっている要素ではありませんでした。

 といって、冒険ふうの後半になってからもノリがゆるいというか大雑把というか、「古き良き」という言葉がぴったり来るような作品だと感じました。

 私立探偵ケントのもとを訪れた美容師の男は、誘拐された三歳になる愛娘の発見と救出を依頼した。事件の手がかりはただひとつ、娘の生存を知らせるため、一週間おきに犯人が送りつけてくる写真だけである。ケントは妻と異能の友人ジョッシュの力を借り、数葉の写真から犯人の所在を割り出そうとするが……。謎解きの妙味と冒険活劇の魅力を併せもつ、読み心地爽やかな英国ミステリの逸品。(カバーあらすじ)

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