『『罪と罰』を読まない』岸本佐知子・三浦しをん・吉田篤弘・吉田浩美(文春文庫)★★★☆☆

『『罪と罰』を読まない』岸本佐知子三浦しをん吉田篤弘吉田浩美(文春文庫)

 何となくは知っているけれど何となくしか知らない名作を、最低限の知識だけをもとに、読まないままで内容を推し量ってみようという、聞くだけで面白そうな企画です。最後には読んだうえでの読後座談会もあります。わたし自身は『罪と罰』は読んだことがありません。

 ざっくりした知識と最初の一ページ(+ヒント用の任意の数ページ)をもとにあれこれ推理する様子は、「九マイルは遠すぎる」のようでもありました。

 漫画『社長島耕作』を内容推測に援用したり、思いつきがドンピシャと当たったりするものの、それは化石から恐竜を復元するようなもので、実際の内容はあらすじだけでは汲み取れないヘンなところが満載の名作だったようです。むしろ読後座談会は面白いところばかりコメントされているので、そこだけ読むとまるでコメディ作品のようで、罪と罰にまつわる観念的な作品という一般的解釈は間違いなのかと不安になってしまうほどです。

 何しろ何となくしか知らないので、誰が殺されたのかというところから既にもう勘違いや衝撃の事実が明らかになります。この場面に限らず全体的に三浦しをん氏が暴走気味、というか作家ゆえの想像力が爆発していて、『罪と罰』をあらぬ方向へと導いてくれるのが可笑しかったです。

 ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことのない4人が試みた、前代未聞の「読まずに読む」読書会! 前半では小説の断片から内容をあれこれ推理し、後半は感想と推しキャラを語り合う。ラスコ(ーリニコフ)、スベ(スヴィドリガイロフ)、カテリーナ……溢れるドスト愛。「読む」愉しさが詰まった一冊。(カバーあらすじ)

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