『ジーヴスの世界』森村たまき(国書刊行会)★★★☆☆

ジーヴスの世界』森村たまき国書刊行会

 国書刊行会ウッドハウス・コレクションの訳者による、バーティージーヴスものを中心としたウッドハウス読本です。

 第一章はウッドハウス作品の聖地巡り。ダリア叔母さんのロンドンの居宅がバーティーのフラットの目と鼻の先だったという事実は、それだけでもう面白いです。それだけ近くでは逃れられようがありません。

 ドローンズ・クラブのモデルとなったクラブで、ドローンズ・クラブと同じような馬鹿なことがおこなわれていたというのにも笑ってしまいました。

 第二章はジーヴスものに出てくる当時のイギリスの文化などが、ジーヴスへのインタビュー形式で解説されています。意外と知らないことが結構ありました。クリスマス・プディングってただのクリスマス用のお菓子だと思っていたのですが、実は末永い繁栄を願って来年の分を前の年に作ってそれを毎年繰り返してゆくものなのだとか。

 第三章ではジーヴスものの刊行に合わせてウッドハウスの生涯を振り返ります。ウッドハウスの娘さんレオノーラがとても魅力的な女性であり、ウッドハウス作品のヒロインとそっくりである、という両立しなさそうな事実が明かされますが、考えてみるとヒロインたちはバーティーにとって天敵なだけで人間的な魅力は別なのでしょう。『封建精神』で作中のお店がガサ入れを受ける理由など、作中の疑問も解決されたり。イヴリン・ウォーウッドハウス愛や、アガサ・クリスティの素っ気なさなど、作家同士の交流も興味深い。

 第四章はバーティージーヴスのプロフィールと、映像化などの関連作品。紹介されているシャーロキアン的考察が楽しい。著者が研究者のノーマンに自説を披露して否定されたりするのが可笑しすぎます。

 ウッドハウスジーヴスものについて、コンパクトにまとめられていました。

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 ジーヴスの世界 


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