SF文庫に続いてはハヤカワ・SF・シリーズの総解説です。そもそも銀背はポケミス以上に書店に置かれている確率が低いし、古本屋でも見かけることはないので、存在自体を知らない作品が多かったです。ヴェルヌやウェルズやドイルなんかの古典も出していたんですね。
このなかから実際に手に取ろうとするなら、『宇宙の妖怪たち』、『宇宙恐怖物語』、『現代ソビエトSF短編集』全3巻、『SFマガジン・ベスト1〜4』、『時間と空間の冒険1・2』といったアンソロジーのほか、「『ミステリー・ゾーン』的な世界」の久野四郎『夢判断』あたりでしょうか。
◆「書評など」
国書刊行会から新シリーズ「ドーキー・アーカイヴ」が出ましたね。第一回配本はL・P・デイヴィス『虚構の男』、サーバン『人形つくり』。サーバンは今月の特集の銀背でも『角笛の音の響くとき』という作品が出ていました。
「世界の大河は頑固でときに幻想的に優しい」椎名誠(ニュートラル・コーナー)
世界はやはりスケールが違います。ロシアの大河は冬は氷の膨張で川幅が広がるとか、車を一時駐車させるとブレーキのメカニズムが凍結するのが怖いとか、想像を絶しすぎていて何だか笑えてきました。
「あるいは呼吸する墓標」伏見完
――世界から喪われた計算資源の在処を求めて、未鳴はその砂漠へと旅だった――(袖惹句)
ハヤカワSFコンテスト最終候補選出および『伊藤計劃トリビュート』収録作家による読み切り作品。
「乱視読者の小説千一夜(51)ちょっと一服」若島正
サイモン・グレイ『喫煙日記』の話です。
「SFのある文学誌(47)『かなしき女王』の彼女 松村みね子の幻想世界2」
前号に引き続き松村みね子、しかも今回は『かなしき女王』というメジャーどころです。
「ウルフェント・バンデローズの指南鼻」(前篇)ダン・シモンズ/酒井昭伸訳
――老魔術師の遺した〈究極の図書館〉とは……!? シモンズによるヴァンス・トリビュート(袖惹句)
ジャック・ヴァンス〈滅びゆく地球〉トリビュート企画の一篇です。国書刊行会から〈ジャック・ヴァンス・トレジャリー〉の刊行が開始されたのを受けてのことですね。第一弾がマグナス・リドルフ、訳者解説によれば第二弾は滅びゆく地球もの『天界の眼』だそうです。第三弾は『奇跡なす者たち』のようなノンシリーズ短篇集だといいな。
「マグナス・リドルフのおみやげ」石黒正数
トレジャリーの装画を担当している石黒氏によるマグナス・リドルフ漫画。『それ町』の室伏先輩ぽい人も登場しています。
「裏世界ピクニック くねくねハンティング」宮澤伊織
――くたびれた女子大生と謎の美女が〈裏側〉へと踏み込み、正体不明の存在を狩る!!(袖惹句)
「神々の歩法」で創元SF短編賞を受賞した作者による読み切り作品。
「幻視百景(3)」酉島伝法