『アサギロ〜浅葱狼〜』(23)ヒラマツ・ミノル(小学館ゲッサン少年サンデーコミックス)
『アサギロ』という漫画はすごい。新選組を活き活きと描いているという点で『ゴールデンカムイ』と双璧を為します。
この漫画の特徴として、壬生浪士組や新選組の結成以前から描いている点が挙げられます。いわば何ものでもない若者たちが何ものかになってゆく過程を描いているのだから、面白くないわけがありません。結成以前なので経歴があまりわかっていない者も多い。だからいくらでも人物を盛りに盛れる。この点も「死後」を描いたがためにかっこよさを盛りに盛れる『ゴールデンカムイ』と共通するところです。
この作品の沖田総司は、いちおう女性から見初められるだけの容貌ではあるようですが、土方と比べるとあまり男前には描かれていません。頭が悪くどこか抜けていて、新選組一の剣士というよりはまるでムードメーカーのようです。そんな隊士たちの駆け抜けっぷりを夢中になって読んでいたものだから、晩年の沖田が肺を病むということを、すっかり忘れていたのです。常識同然に知っていたはずなのに、この23巻でその徴候が明らかになったときには本当に驚いてしまいました。隊士たちがそれくらい漫画のなかで自由に動いている作品です。
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