『塵クジラの海』ブルース・スターリング/小川隆訳(ハヤカワ文庫FT)★★☆☆☆

『塵クジラの海』ブルース・スターリング小川隆訳(ハヤカワ文庫FT)

 『Involution Ocean』Bruce Sterling,1977年。

 サイバーパンクの雄ブルース・スターリングのデビュー作。〈プラチナ・ファンタジイ〉の一冊です。

 スペース・オペラとサイエンス・ファンタシイの違いがわからないのですが、とにもかくにも水の代わりに塵ばかりの海を舞台にした海洋冒険小説でした。

 麻薬の元となる鯨油の売買を法律で禁止されてしまったジャンキーが、みずから捕鯨船に乗り込んで鮫や肉食魚と戦ったり、いかれた船長の研究と探索に付き合わされたり、異形の異星人女となぜか恋をしたりする話です。

 船上まで飛んでくる肉食魚を振り払ったり、塵嵐に巻き込まれたり、船長の持論に付き合わされて海底探検に行ったり、やってることはベタなんだから、素直に王道の冒険小説にしておけばいいのに、ジャンキーやらアブノーマルなセックスやらといった悪い意味でアメリカ人らしいベタな要素を入れているせいで陳腐になっています。

 主人公がジャンキーではなく船長だったなら、まっとうな海洋冒険小説になっていたのかなあ。

 人生に倦み、最高の刺激を求めていたジョン・ニューハウスは、塵に覆われた異星の海に棲む“塵クジラ”から採取される麻薬〈フレア〉を探す旅に出た。コックとして乗りこんだ塵クジラ漁船で、翼を持ち、優雅に空を翔ける異星人女性ダルーサと出会ったジョン。漁船で厳しい生活をともにするうちに、激しく惹かれ合っていくふたりだったが……。若き日のスターリングが華麗に描き上げた、ロマンティックな冒険ファンタジイ。(カバーあらすじ)

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