『ライト』M・ジョン・ハリスン/小野田和子訳(国書刊行会)★★☆☆☆

『ライト』M・ジョン・ハリスン/小野田和子訳(国書刊行会

 『Light』M. John Harrison,2002年。

 ナイトランド・クォータリーに掲載されていたヴィリコニウムものの短篇はヒロイック・ファンタジーでしたが、本書はいかにもという感じのポストモダンシリアル・キラーでもある研究者カーニー、宇宙船船長セリア・マウ、チャイニーズ・エドとして仮想空間に耽っているエド・チャイアニーズの三つのパートが交互に語られるのですが、その一つ一つが断片的でちょん切れているので、流暢な語りによるまとまったストーリーを楽しむことはできません。

 冒頭はそれでも新しい物語への好奇心が勝りましたが、そこを過ぎた序盤はどうでもいいような要素が後々どう組み立てられてゆくのかを確認するための苦行でした。

 ようやっと物語が繋がり始めるものの、序盤の苦行に見合うだけの面白さが待ち受けていたかというと、そこまでのものでもありません。これでまったく新しい小説を読ませてくれるとかならともかく、どこかで読んだような。。。

 ラストに至ってはもう作者の自己満足という感じでした。

 1999年ロンドン。物理学者マイケル・カーニーは、量子コンピュータ完成へのブレイク・スルーを間近に控えていた。しかし、彼にはそれより切実な問題があった。子供の頃にある光景を目にして以来、馬の頭蓋骨の姿をした怪物に追われる彼は、つねにダイスを振り、出た目にしたがって各地を転々とし、行きずりの女を殺すことで悪夢から逃げつづけているのだ……。

 400年後、銀河の奥深くにひろがる、放射線エネルギーの大海、ケファフチ宙域。肉体を捨て宇宙船〈ホワイト・キャット〉と一体化し、宙航コンピュータであるシャドウ・オペレーターに十次元空間の操作を委ねながら海賊行為を繰り返す女船長セリア・マウは、謎の箱の手がかりを追うべく遺伝子の仕立て屋のもとへ向かう。それは捨てたはずの彼女の過去へと向かう旅の始まりだった……。

 一方、ケファフチ宙域の異星人の遺物を漁る目的で発展した周辺地域〈ビーチ〉にあるヴィーナスポートでは、おちぶれた元宇宙船パイロット、エド・チャイアニーズが仮想空間に入り浸っている。やがて奇妙ななりゆきから〈パテト・ラオのサーカス〉に潜り込み、未来予知の見世物をおこなう羽目に。そのトレーニングで彼が見たものは……。

 ホラー仕立ての現代小説、ハイパー・モダンなスペース・オペラ、そしてコミカルなサイバーパンク――手触りの異なる三つの物語は、めくるめく展開をみせながら徐々に共鳴し始め、目も眩むばかりのラストをむかえる。(カバー袖あらすじ)

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