『私立霧舎学園ミステリ白書 七月は織姫と彦星の交換殺人』霧舎巧(講談社ノベルス)★★★☆☆

『私立霧舎学園ミステリ白書 七月は織姫と彦星の交換殺人』霧舎巧講談社ノベルス

 霧舎学園シリーズ四作目。

 期末テスト前日、琴葉は弓絵に連れ出され、ナオキが籠っているスタジオを訪れた。そこで芸能カメラマンの仁多森が隣のマンションから墜落死したのを目撃する。被害者の背中には萬葉集の短歌と「祈願成就」と書かれた短冊が貼られていた。ナオキのファンである蘭堂ひろみが死体を発見し、ゼミを抜け出したひろみを追ってきた付属大学教授の早乙女は、短冊を見て四年前に起こった殺人事件との類似を指摘した。

 ナオキから電話で事件を知らされた頭木は、墜落そのものの目撃者と短冊の発見者が弓絵であることから、弓絵と共犯者による犯行だと推理する。

 一方そのころ入れ違いで琴葉宅を訪れた棚彦は、自宅に届いた万葉集の短歌が書かれた短冊を羽月警視に見せていた。好きな人の名前を書くと恋が叶うという、以前高校で流行っていたゲームと同じものだった。それが今回、七夕に関係のある名前の生徒に送られてきたようだ。

 転校生の琴葉とスタジオにいるナオキの居場所に短冊が届いていたことから、ナオキ以外には短冊を届けることは不可能だと、棚彦はナオキを疑う。

 目撃者が勘違いなどで意図せず噓をついたことで探偵が真相を見誤るミステリは読んだことがありましたが、関係者が馬鹿だったから正確な情報が伝わらずに真相を見誤るというのは初めて読みました。弓絵も教師の脇野もそういうキャラだということが読者にも自明の、四作目ならではの仕掛けでした。

 動機のある人間は一人だけで、タイトルに交換殺人と謳っているのですから、ではもう一人の犯人は誰かというのがポイントのところでの、こうした隠し方は面白いと感じました。

 恒例となった本自体の仕掛けですが、今回は短冊に仕掛けがありました。図として挿入された短冊と、しおり状に挟み込まれた短冊、どちらもちゃんと手がかりになっていました【※図の短冊の上下の長さ。しおりの裏表。】。

 七月。――天漢霧立上棚幡乃雲衣能飄袖鴨。死体の傍らで発見された謎めいた文字が連なる《祈願成就》の短冊が美少女・琴葉を七夕伝説に由来する殺人事件へと誘う。すべての謎の中心、「笹乙女委員会」とはいったい何なのか……?

 学園ラブコメディーと本格ミステリーの二重奏、「霧舎が書かずに誰が書く!」、“霧舎学園シリーズ”。七月のテーマは交換殺人!(カバーあらすじ)

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