『川の名前』川端裕人(ハヤカワ文庫JA)★★☆☆☆

 なぜか違和感があると思った。自分の子どものころはこうじゃなかっただとかいうのとも違う。子どもを描くのが下手というのとも違う。確かに見たことはあるのだけれどどこかが違うというような微妙な違和感。

 途中まで読んでようやく気づいた。これは漫画の登場人物なのだ。漫画やドラマのキャラクターとしてならば、この三人やまわりの人間たちはすっかりお馴染みです。それは小説としてなってない、とかいうことでは全然ない。

 セリフとト書きだけで立ちあがってくるキャラクター、と言えばいいだろうか。そしてまた、作品内での役割分担があらかじめはっきりと決定づけられているキャラクター。

 そうした登場人物が、いきいきと描かれています。

 せっかくの「川の名前」という思想がまったく生きていないのが残念。喇叭爺がひとことしゃべるだけで、大人も子どもも学校の先生も町内の人もテレビ視聴者も、みんながみんな感銘を受けてしまうという嘘くささ。誰も彼もがエコ・ブームな現実に対する痛烈な風刺なのかと勘ぐりたくもなってしまった。

 本書は子どもの視点で描かれているわけだから、喇叭爺に対する批判があったとしてもそれは子どもには見えない部分だったのだ、と考えればそれなりに納得できなくもないが。

 少年冒険小説としての見どころは、なんといっても後半に描かれた川下りのクライマックスです。ここを読むだけでも読む価値あり。

 菊野脩、亀丸拓哉、河邑浩童の、小学五年生三人は、自分たちが住む地域を流れる川を、夏休みの自由研究の課題に選んだ。そこにはそれまでの三人にとって思いもよらなかった数々の驚くべき発見が隠されていたのである。ここに、少年たちの川をめぐる冒険が始まった。夏休みの少年たちの行動をとおして、川という身近な自然のすばらしさ、そして人間とのかかわりの大切さを生き生きと描いた感動の傑作長篇。(裏表紙あらすじより)
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川の名前
川端 裕人著
早川書房 (2006.7)
ISBN : 4150308535
価格 : ¥735
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