『マダム・エドワルダ/目玉の話』バタイユ/中条省平訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

 生田訳バタイユは難解という印象があった。というわけで、新訳はいかに?と思い読んでみました。意外なことに生田訳って読みやすかったんだなあというのが率直な感想。新訳だけに自然で読みやすい一方で、原文の持つ「論理の愚直なまでの道すじ」を回復しただけあって、直訳調にならざるを得ないところがところどころある。

 生田訳で読んだバタイユを再読してみるなら今回の新訳、初めて読むなら生田訳の装飾過剰な文章に圧倒されるのがよいのではないだろうか。

「マダム・エドワルダ」(Madame Edwarda)★★★★☆。新訳で読んでもやっぱり観念的で難解な作品。エピグラフはかっこいいんだけどな。

「目玉の話」(Histoire de L'Oeil)★★★★☆。解説ではサドの名前を挙げていたけれど、この新訳版で読むと乾いた語り口からむしろ『悪童日記』あたりをイメージした。これも翻訳の影響というものなのでしょう。タンビーな饗宴が好きなら生田訳で、クールなピカレスクが好きなら中条訳で。残虐性とエロス、死とエクスタシーが等価になると、どうしてこんなに人を引きつけるんだろか。目玉と玉子と金玉を等号で結ぶのはオマケみたいなもんだが。

 作中作という構成をとって作中にあとがきを書くことで、サドすら否定(というか超越)しようとしている。一見するとお洒落な書き方とは思えないが、巻末にエピグラフがあるみたいなものだと思えばこれもまたかっこいい。

 「ある街角で、不安が私に襲いかかった。汚らしく、うっとりするような不安だ」極限のエロスの集約。戦慄に満ちた娼婦との一夜を描く短編「マダム・エドワルダ」に加え、目玉、玉子……球体への異様な嗜好を持つ少年少女のあからさまな変態行為を描いた「目玉の話」を収録。(裏表紙あらすじより)

 しかし書き写して初めて知ったが、このあらすじはないだろ……「あからさまな変態行為を描いた」って何だよそりゃ。
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