『帝国主義論』レーニン/角田安正訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

 『Империализм』Н. Ленин,1917年。

 はじめに刊行予定のリストを見たときは、今さらレーニン?と思った。しかも帝国主義とは時代遅れな。確かにこの手の本の旧訳はひどいものが多いのだろうけれど……。

 ところがまず解説を読んでみて、己の不明を恥じました。「ソ連崩壊後、社会主義経済を意識する必要のなくなった資本主義は、マルクスの描いた資本主義、つまりレーニンが理解していた資本主義に近づきつつあるようにも見える。」

 一部の大企業が労働力や生産力を独占し、大多数を占める小企業が所有する労働力や生産力はわずかでしかない。

 資本主義について書かれてあるのだから当然といえば当然だけれど、今の日本では当たり前のことである。ところがその当たり前のことがもたらす必然的な帰結については、指摘されるまで気づかずにいた。あるいは気づきながらも目をつぶっていたのか。

 だから今になって格差格差と騒ぎだすのだろう。当たり前の現状から生み出されるのは、当たり前の結果でしかないのに。

 社会主義システムは次々に崩壊していったけれど、資本主義批判としての本書は今も充分すぎるほどの意味を持っている。

 だからといってすわ社会主義を採用すべきかとか革命が必要なのかということにはならない。ならないけれど、じゃあどうすべきなのか。

 百年も前から問題提起はされていた。考える時間はたっぷりあったはず。地球温暖化の問題といい、日本経済の問題といい、議論すべき時機はとうに過ぎてしまった。たった今この瞬間から取り組まなきゃならない。

 でもどうすればいいのか。レーニンはその答えだけは書いてくれない。
 --------------

 『帝国主義論』
  オンライン書店bk1で詳細を見る。
 amazon.co.jp amazon.co.jp で詳細を見る。


防犯カメラ