『恐るべき子供たち』ジャン・コクトー/中条省平・中条志穂訳(光文社古典新訳文庫)★★☆☆☆

 おかしな話に聞こえるが、冒頭を読んで真っ先に思い浮かべたのが、クノー『文体練習』だった。

 子どもたちの雪合戦。兄貴的な子どもと弱々しい子ども。怪我。教師に呼び出される。相手を必死でかばう主人公。

 これだけならケストナー飛ぶ教室』の一場面であってもおかしくない。けれどそこはもちろんフランス人コクトーのこと。一つ一つの言動ごとに、いちいち大げさな比喩を用いたり、感じやすい胸の内を事細かに連ねたり。(コクトー自身による絵と相まって、パロディみたいで(別の意味で)面白かった)。

 それはともかく。いかにもフランス風の腺病質で繊細で神経質なくせに退廃的でもあるその文章が、初めから救いがたい破滅を約束しているようで物悲しい。

 美しく気高く刹那的で破滅的な生き方をするぜ!という思春期の〈子供たち〉特有の、笑っちゃうくらい肥大した自意識を耽美にうまく描いている。と言えればいいんだけど、狙って書いたというよりは、ナルシストなコクトーの天然なんだろうな。頼むから自分の不幸にうっとりと酔わないでください。

 瓜二つの姉弟と、弟の憧れの先輩(男)に瓜二つの少女だなんていう、一部の人には狙い澄ましたような設定に、ついていくのがつらかった。

 『Les enfants terribles』Jean COCTEAU,1929年。

 14歳のポールは、憧れの生徒ダルジュロスの投げた雪玉で負傷し、友人のジェラールに部屋まで送られる。そこはポールと姉エリザベートの「ふたりだけの部屋」だった。そしてダルジュロスにそっくりの少女、アガートの登場。愛するがゆえに傷つけ合う4人の交友が始まった。(裏表紙あらすじより)
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