『レーニン』レフ・トロツキー/森田成也訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

 『О Ленине』Лев Давидович Троцкий,1924年

 今になってようやくロシア語原典からの邦訳だというのだから驚く。

 して、新訳する意義は?と問われるならば、スターリニズムとアンチ=スターリニズムのフィルターを掛けられていないレーニン像の提出(再提出?)ということになるのだろう。

 小学生くらいのときにソ連崩壊→レーニン像破壊のニュース映像を嫌というほど見せられた人間としては、なんとなくレーニン=旧世界の代表者というイメージがつきまとって離れないのだけれど。

 回想録という性質上だろうか、特に最初のころなんて、なんだか学生サークルの会話みたいで妙におかしい。そこが、面白いといえば面白いんだけれど、ネックといえばネック。人間は伝わってきても、時代が伝わって来ない嫌いがある。

 けれどそれも第一章まで。第二章からは、いよいよレーニンが時代と直結し始める。サークル活動くささは抜けないけど。みんな直訳調でしゃべるからだと思う。新新訳があればその点の改良求む。

 第三章はトロツキーによるレーニン讃歌。活動家の面目躍如たる名調子が味わえる。

 飽くまで回想録なんで、読んで面白いってものでもないんだけど。

 レーニンの死の直後、本書の主要部分はスターリンによる迫害の予感のなかで書かれた。「ソ連共産党ソ連全体が全体主義の悪夢に飲み込まれてしまう」直前だからこそ「等身大」に描きえた、まさに珠玉の回想録である。ロシア語原典からの初めての翻訳。(裏表紙あらすじより)
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